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2011-11-21 00:00
「東アジア低炭素パートナーシップ」構想の意義
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
野田佳彦総理は、11月19日にインドネシアで開かれた東アジアサミット(EAS)において、温室効果の排出量取引の新しい仕組みである「東アジア低炭素パートナーシップ」を提案し、各国の賛成を得た。この構想は、日本が域内の途上国のCO2削減に資する事業を実施すれば、その削減分の一部を日本のCO2削減分として繰り入れることができるというものである。その準備として、政府は、日本企業による技術供与や人材育成を、ODAにより支援するとのことである。この構想自体は、よい提案であると、おおむね評価できる。
先進国と途上国による温室効果削減事業における削減分の一部を、先進国が自国の削減分として享受できる制度としては、クリーン開発メカニズム(CDM)が京都議定書に定められている。しかし、CDMは、国連のCDM理事会などによる煩雑な審査の過程を経なければならず、適用基準も極めて厳しい。利用しやすい制度であるとは到底言えない。したがって、「東アジア低炭素パートナーシップ」は、CDMへの代案として価値がある。日本政府は、28日から南アフリカで開かれる気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)で行われる、2013年以降のポスト京都議定書についての議論にも、「東アジア低炭素パートナーシップ」構想を反映させることを目指す。EAS18カ国は、世界のCO2総排出量の約6割を占めており、これを背景とする「東アジア低炭素パートナーシップ」構想の交渉ポジションは、悪くないはずである。既に、インドネシア、ベトナム、インドなどが構想を支持している。
我が国がCOP17に臨む姿勢は、ポスト京都議定書の枠組みの採択を2015年以降にするよう要求したり、今回示したような柔軟性に富んだ排出量取引制度の提案を目指すなど、評価できる点も少なくないが、グランドデザインにいささか欠けているように思われる。そもそも、自国のエネルギー政策と温室効果削減目標を整合性あるものにできていない。一方、「東アジア低炭素パートナーシップ」は、温室効果削減の文脈だけでなく、我が国の東南アジアやインドとの戦略的連携強化の一環としても位置付けることができるし、そうすべきである。
もちろん、戦略的連携強化といえば、第一義的には安全保障上の協力関係強化である。しかし、残念ながら、我が国は、集団的自衛権を行使できないとする憲法解釈や、武器輸出三原則といった妨げがあり、安全保障上の連携強化という核心部分にはすぐに迫れる状況にない。したがって、出来るところから始めるしかない。また、連携強化というのは重層的であればあるほどよい。米国が、あらゆる手段を用いて「アジア太平洋回帰」の姿勢を明確化しているのと同様、我が国も、同地域への深い関心を示すのに役立つことは、積極的に実行していくべきである。もちろん、「これは戦略的連携強化である」などと喧伝する必要はなく、そのような拙劣なやり方をすべきではない。しかし、「東アジア低炭素パートナーシップ」が実現した際には、戦略的連携強化という観点に従って、メリハリのある運用をすることで、その価値は、より高まることになろう。
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