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2011-11-28 00:00
カメ発「幽霊新党」が総スカン
杉浦 正章
政治評論家
真夏の幽霊ならゾクゾクと寒気がするが、真冬の幽霊ではもともと寒いからゾクッともしない。国民新党代表・亀井静香が「幽霊新党」を語って、政界から総スカンと侮蔑を受けている。政党助成金目当てのうさんくささが原因だ。政治家にも器量の大小があって、器の小さい政治家が発言すると、総じて永田町がむかつく問題が二つある。一つは「解散」。他の一つは「新党」だ。「お前にだけは言われたくない」という感情が先に立つのだ。よい例が鳩山邦夫の新党発言だ。鳩山は去年の3月、「私は政界再編の坂本龍馬をやりたい」と述べて、この指とまれと動いたが、誰もとまらず、いまは尾羽打ち枯らしつつある。今の政界で「新党」と発言すれば、永田町がピリピリと反応するのは、小沢一郎一人くらいのものだろう。亀井が集めて、第3極を目指せるなどという判断は、おこがましいのだ。小泉進次郞が郵政での親の敵とばかりに「新党、新党と言うが、言う人が新しくない」と言い切った通りだ。
にもかかわらず、亀井がひろげた大風呂敷に飛びついたのが産経新聞。なんと11月25日付朝刊トップで、でかでかと「亀井代表が新党構想、石原知事を党首」とやったのだ。筆者は瞬時に「カメに乗せられたな」と思ったが、その後の永田町の反応を見れば歴然。クソミソなのだ。まず、みんなの党代表の渡辺喜美が「政党助成金欲しさというのが露骨。助成金ありきの新党はすぐに飽きられ、必ず失敗する」と、狙いを暴いた。名前を亀井に出された、たちあがれ日本代表・平沼赳夫は「彼の一人芝居だと思う。カリスマ性がないから、石原慎太郎を呼んでこようとしている」と手厳しい。当の都知事・石原も「アイム・クワイト・オールド・マン」と年をとりすぎていることを理由に拒絶の弁。大阪府知事・橋下徹は25日夜「新党に参加することはない」と断言。肝心の小沢グループも、小沢から若手に「乗らないように」とのお達しが届いていると言われている。
かくして産経の報道は一夜にしてつぶれたのだ。朝日の扱いを見れば政治記者の判断力が分かる。朝日は26日朝刊4面のベタ扱いだ。無視すれすれくらいの判断が正しいのだ。それにしても亀井の最近の発言は常軌を逸している。「消費増税なら連立離脱」「TPPやるなら覚悟がある」など、ざっと数えただけで4回「政権離脱」発言を繰り返し表明している。それでいて今度は新党発言。まるで「オオカミ老年」と化している。狙いと原因はどこにあるのだろうか。一つは前首相・菅直人と比べると現首相・野田佳彦が御しにくい点だろう。消費増税にしても、亀井の言うことなど全く聞かない。TPPも、亀井の反対を押し切って、事実上の参加表明だ。これでは亀井が「命」とする郵政改革法案の成立などとてもおぼつかない。野田にしてみれば、消費税やTPPに反対する国民新党は、連立相手としての存在価値がなくなってきており、むしろ自公を説得する方が大切なのだ。
加えて自民党筋は「菅の時は『参院議員を自民党から10人引き抜く』と言って、官房機密費をジャブジャブ使ったが、野田からは1銭も出なくなった」と解説する。たしかに亀井の一本釣りも、6月に「雑魚」が1匹かかっただけで、後はなしのつぶてだ。亀井はその菅にも新党を働きかけたと言われている。しかし、さすがに菅は名前が出されると悟って、その場で断ったようだ。ようするにカメさんは自分の出番がない上に、国民新党も依然支持率がゼロと行き詰まった。野田もよいしょをしてくれないし、面倒を見ようという財界人もいない。切羽詰まって空想性虚言症的な「新党」説を流したのだ。しかし名前に上げた主要人物すべてが拒絶反応を示すようではお終いだ。だいたい根回しもなしにイチかパチかの新党構想など、政党党首たるものが軽々しく口にすべきものでもあるまい。こけにされた国民新党幹部の1人は「はらわたが煮えくりかえっている」のだそうだ。そのうちにカメは裏返しにされて、日干しになるのがオチだ。
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