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2011-12-07 00:00
自衛隊と国民の距離は格段に狭まっている
船田 元
元経済企画庁長官
先日、選挙区内の陸上自衛隊駐屯地を訪問したが、駐屯地幹部との話の中では、私としても新たなものの見方を教えていただいた思いがある。自衛隊の現地での活動は約4ヶ月に及んだが、道路などの緊急整備や瓦礫の撤去、行方不明者やご遺体の捜索・収容など、厳しい状況の下で過酷な任務にあたってきた。残念ながら彼らの活動の実態は、ほとんどマスコミでは報道されず、幹部の口もおしなべて重いものがあった。
そうした中、彼らは私に自衛隊員の心のケアの必要性を強調した。過酷な現場に行って、隊員はまず呆然とするしかなかったようだ。しかし作業が始まると「自分がやらずに誰がやるか」という、意識の高揚が見られたという。その状態は原隊復帰後も続いているが、そろそろ気持ちが落ち込み、一種のうつ状態になる隊員も出始めているという。このような気持ちの変化は、ごく普通の人間の反応ではあるが、一定の訓練を受け感情をコントロールできる自衛隊員ならば、その反応は一般の人々よりは穏やかであるのだろう。しかし彼らですらも、反応の激しさを心配するほど、現場の状況が厳しかったということだ。
隊員の心のケアについては、自衛隊内部の医療スタッフで当面は対応できるとしているが、もし外部の手助けが必要であれば、遠慮なく言って欲しいというのが、私の率直な気持ちであり、そのことを先方にも伝えた。今回の活動について自衛隊員は極めて抑制的に表現していて、それはそれで好感を持つが、所詮生身の人間である。率直に語っていただき、お互いに助け合うことが必要ではないか。
もうひとつは、被災地の人々の自衛隊員に対する感謝の気持ちである。彼らが被災地を去るときに送別会を開いたり、感謝の集いを開いたりして、その気持ちを率直に表現したかったと思うが、部隊上部からの指示により、自粛したところもあったという。自衛隊員としても「当たり前のことをやったまでだ」との思いから、遠慮したところもあったに違いない。しかし彼らの働きは感謝しても仕切れないくらいだ。駐屯地の地元でも「ご苦労さん」の会をやってもよかった。以前に比べると、自衛隊と国民の距離は格段に狭まっている。しかし今回のことを想起すると、なお両者の間にわだかまりが少しは残っているのかもしれない。また自衛隊の活動についてあまり報道しないマスコミの態度が、それを助長しているのかもしれない。我々国民が自衛隊を必要としているのであれば、もっと率直に彼らを心の中に受け入れるべきではないのか。
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