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2011-12-16 00:00
(連載)福島第一原発事故による放射能汚染への対応(2)
角田 勝彦
団体役員
基本的問題は、被曝の健康リスクである。最近も粉ミルクからのセシウム検出(最大1キログラムあたり30.8ベクレル)が、国の暫定規制値(同200ベクレル)を下回るとはいえ、お母さんたちを震え上がらせた。低度の被曝により健康に影響が生じないかには疑義もある。12月9日、福島第一原発の吉田所長が病気療養のため退任された。病名はのちに食道がんと発表された。3月11日以来の被曝線量が内部外部合わせて70ミリシーベルトで発病との因果関係は否定されているが、激務と合わせ被曝の影響を認め職務に殉じたものと考える人も多い。とはいえ被曝ゼロを求めるのは無理がある。そもそも人も体内に放射性物質を含むため、人体全体で約6千~7千ベクレル出している。過剰な反応は好ましくない。日本人は自然状態で年間約2.4ミリシーベルト浴びており、これ以外に、人工的には年間1ミリシーベルト(毎時0.23マイクロシーベルト)が一般人の許容限度とされている。
原発や病院など被曝の恐れがある職場では、被曝量は5年間で最大100ミリ・シーベルトという基準が法律で定められている。 多くの専門家は「100ミリ・シーベルトまでなら、統計的に健康影響は認められない」としている。政府が、今回居住できる基準を年間放射線量が20ミリシーベルトを超えない地域としたのは、国際放射線防護委員会(ICRP)が定める個人の被曝上限や、内閣府の原子力安全委員会が8月に示した条件をもとにしたものである。 しかも本閣議決定は、年間20ミリシーベルト未満の地域は2013年8月末までの2年間で一般人の被曝線量を半減し、子供は60%減とすることなどが柱としている。これら外部被曝とならんで、牛肉、コメ、次いでは粉ミルクのような食品からの被曝にも関心が高まっている。
これまで食品安全委員会は、食品だけでなく環境からの外部被曝も含めて100ミリシーベルトと規定してきたが、10月27日、「健康影響が見いだされるのは、生涯の累積でおおよそ100ミリシーベルト以上」とする評価をまとめた。これまで放射性セシウムの食品の暫定基準値(超過すると食用に回せない)は、水道水と牛乳・乳製品が1キログラム当たり200ベクレル、コメなどの穀物や肉、野菜は500ベクレルだったが、今後はより厳しくなると予想されている。日本政府の求めで除染の進め方について助言するため来日した国際原子力機関(IAEA)の調査団は、10月14日にまとめた報告書で除染で過剰な対応を避けるよう求めている。具体的には森林や線量の低い場所での全面的な除染は時間や費用の面で効率が低いとした。
幸い、福島では、18歳以下36万人対象という世界でも類見ない規模で子供の甲状腺検査がスタートした。全県民200万人を対象にした第一原発の事故による外部被曝線量調査の最初の集計で、住民約1730人の推計値が4ヶ月で最高37ミリシーベルト、平均1ミリシーベルト強だったことも判った。県民の健康管理を続けることのみで貴重なデータが得られよう。除染技術も人類の貴重な財産になろう。「脱原発か原発推進か」の議論を離れて冷静に科学的知識を集積し、過剰な反応を抑えつつ、経費と時間の点で効率が高い最善の選択を行っていくことが望ましい。(おわり)
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