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2012-01-05 00:00
消費税政局で民主党政権は存亡の攻防へ
杉浦 正章
政治評論家
太筆書きで展望するなら今年の政局は、民主党政権が野党の攻勢と内乱で危急存亡の事態に直面するということだ。内閣不信任案可決なら首相・野田佳彦はおそらく解散・総選挙に踏み切らざるを得ないだろう。どうしても消費増税法案を通すなら話し合い解散しか手はない。しかし選挙に勝つ展望はゼロに等しい。政局は大展開して自民・公明両党を軸とした政権に復帰する公算が大きい。1月4日の記者会見で野田は高揚感あるトーンで、チャーチルの言葉を引用して「ギブアップ」(屈服)しない姿勢を打ち出したが、状況をよく掌握していない。案の定、野党は総反発だ。ただでさえ激突含みなのに、簡単に与野党協議が動くとみる方が甘い。当面の展望を切り開くために野田は、月内にも内閣改造に踏み切らざるを得まい。防衛相・一川保夫と消費者相・山岡賢次に対する問責決議問題がペンディングになっているからだ。このままでは通常国会の日程協議にすら入れない。消費増税法案をめぐる与野党協議など不可能に近い。両相を事実上更迭することしか道はないのだ。改造して通常国会の開会にこぎ着けるしかない。更迭せずに中央突破なら、確実に行き詰まる。
しかし通常国会では、野田が「不退転の決意」で取り組むことを公言した消費増税が、野党の反対と与党内の造反で、激動要素として存在し続ける。いやしくも本質的には政党交付金目当てで民主党を離党して新党を作った議員らが4日、「新党きづな」を届け出たが、薄汚い上におこがましい。「きずな」は大震災からの復旧・復興を目指す神聖なる合い言葉だ。今後受け皿的に若干増えるかも知れないが、罰が当たって選挙で雲散霧消する。こうした中で消費税政局は、野田政権に第一波と第二波の危機をもたらすだろう。第一波は3月末。それで打開しなければ、第二波が6月末に襲来する。3月末危機は何故起こるかというと、野田が公約した消費税法案の同月提出が実現できるかどうかが焦点となるからだ。まず消費税に反対する小沢一郎グループが、法案作成の段階から攻勢を仕掛けるだろう。素案は暮れにまとまったが、法案がまとまらない可能性がある。野党はそこを見込んで、消費税をめぐる与野党協議は、「民主党内をまとめるのが先決」として本腰を入れないだろう。まとまらなければ野田のリーダーシップがまともに問われる問題である。加えて野党は予算関連法案をめぐっても、その成立を引き延ばし、政権を揺さぶるだろう。政権内部の動きと野党の動きが複雑に絡んで、野田を追い込む。これが3月危機だ。
何とか消費増税法案をまとめて、国会提出しても、成立させるのはラクダを針の穴に通すほどに難しい。まず、衆院が通るかというと、小沢グループ100人余が造反すれば通らない。60人の反対で可決できないのである。よしんば衆院を通過させることが出来ても、参院はねじれており、可決成立は不可能に近い。野党は解散に追い込むために早ければ3月危機の時点で、遅くとも6月末までには、内閣不信任案を提出するだろう。同不信任案は、小沢グループが離党覚悟で賛成に回れば、可決される。たとえ不信任案が否決されても、参院に首相問責決議が出されれば、可決となる公算が大きい。参院から首相が否定されても、法的には無視すればよいが、野田は無視できない状況に追い込まれるだろう。結局解散・総選挙となる公算が高い。従って野田がまさに命がけで成立を図る消費増税法案は、成立しないまま選挙突入となり得るが、これを回避する道はただ一つある。筆者が昨秋から指摘している話し合い解散である。どっちみち解散に追い込まれる状況に直面して、野田は消費増税実現を条件とする話し合い解散の誘惑に駆られる可能性が予見できるのだ。自民党にしてみても、政権交代を達成しても、消費税の重荷を抱えていては政権は持たないという判断があろう。
自民党幹部は「本当は野田に片づけさせるのが一番いい」と漏らしている。野田が消費税法案成立を条件に話し合い解散に応ずれば、後は国民の審判にすべてを委ねれば良いことになる。総選挙になった場合は、民主党が大敗するだろう。小沢の言うように100議席を大きく割るかも知れない。よく現段階の世論調査で自民党が伸びていないことを理由に、民主党の大敗はないという見方があるが、通常の世論調査では総選挙の帰趨(すう)は判断出来ない。3年前の総選挙も、自民、民主は支持率が拮抗していたが、総選挙ぎりぎりになって、大きく民主党が自民党を上回って圧勝となった。浮動票が動いたのだ。今度の浮動票は、偽まんのマニフェスト政治の崩壊、2代にわたる失政首相に次いでの消費増税一筋首相を嫌気して、野党に動くだろう。前回は「今度だけは民主党に入れさせてもらう」という層が、民主党政権の体たらくで猛省を促されているのだ。自・公・みんなの各党が議席を伸ばす可能性が高い。大阪市長・橋下徹が政界に進出しようとしても、ノックを当選させたような「大阪のムード」は特殊であり、全国的に波及しまい。したがって自公政権にみんなの党が加わるような政権形態が予想される。今年の政局を大きく俯瞰(ふかん)すれば、政権交代ありの流れだろう。
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