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2012-01-11 00:00
F35開発をめぐるオバマ政権の混乱と同盟国への悪影響
河村 洋
ニュー・グローバル・アメリカ代表
統合打撃戦闘機(JSF)F35の開発は、研究費の高騰と国防予算の縮小で大幅に遅れている。また、これが多国籍プロジェクトのために、国際パートナーの多様な要求にも応えねばならない。F35はしかるべき時期に配備されるのだろうか?『ワシントン・ポスト』紙のウォルター・ピンカス記者は12月27日付けの論説で、F35開発計画を進めるうえで直面するいくつかの困難について論じている。ピンカス氏が最近投稿した論説をふり返りたい。
現時点では、この多目的戦闘機のテストは20%までしか進んでいない。この戦闘機には最先端のステルス技術が使われているが、機体を制御するソフトウェアの開発が開発チームにとって最も厄介な課題である。それによって研究費は初期の予測よりはるかに高くなった。その結果、ロバート・ゲーツ前国防長官は、F35戦闘機の生産を減らした。12月15日にはジョン・マケイン上院議員が「国防総省は技術的な問題への理解もなしにF35は費用対効果の高い第5世代戦闘機だと宣伝した。そのような杜撰な計画は『災難の元凶』だ」と批判した。開発費の予期せぬ高騰とともに、国防費の削減が統合打撃戦闘機の開発計画に大きな障害となっている。計画当初は3,000機のF35戦闘機が生産され、アメリカの三軍と同盟国の軍の戦闘爆撃機と世代交代することになっていた。ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン上級研究員は「各軍や国ごとのそうした多様な要求を満たすよりも、統合打撃戦闘機の総数を削減して空軍版のF35Aに集中するとともに、海兵隊用のV/STOL版F35Bと海軍版のF35Cは計画破棄せよ。F35戦闘機の経過右派機および削減分は無人機を発注するように」と提言している。シンプソン・バウエルズ債務削減委員会も同様な提言をしている。
問題は、中国の急速な軍拡とロシアの依然として侮りがたい空軍力を前に、アメリカが空軍力の優位を持続できるかである。両国とも現在、ステルス戦闘機を開発中で、やがては反欧米の専制国家にそれらの戦闘機を輸出するだろう。ソ連はかなり前に崩壊したというだけで、ウォルター・ピンカス氏がこれらの脅威を軽く見るのはあまりに楽観的である。さらに多国間プロジェクトの性質上、上記のような計画破棄が実施されれば同盟国に自国の国防計画の変更を強要することにもなりかねない。F35のV/STOL版が破棄されれば、イタリアとスペインは現在のハリアーに変わる空母艦載機を失ってしまう。この計画で第二位の出資国であるイギリスも、F35Cが入手できないとなるとCVF(次期空母)計画を練り直さねばならなくなる。日本は次期戦闘機にF35を選定したが、甚だしい開発の遅延によってイギリスの政策形成者達が現行案を再検討する可能性もあるので、クイーン・エリザベス級空母の計画から目を離すべきではない。F35をめぐる現在の不首尾によって、大西洋と太平洋でのアメリカの最重要同盟国の国防に支障をきたすことになる。
確かに、ペンタゴンの計画は杜撰で、それが新型ステルス戦闘機の価格を予想外に押し上げたと言える。しかしオバマ政権がアメリカと同盟国の防衛に確固たる関与をするのかも問わねばならない。アメリカの国益に適うのは、アジア回帰よりも世界秩序を維持するだけの充分な軍事力の維持である。中国への備えを強化することは正しいが、この国の拡張主義は東アジアだけでなく西方にも向いている。中国は中央アジアと中東でも影響力の拡大を望んでいる。充分な軍事力の裏付けのない『アジア回帰』などは、イランが好戦性を強めアラブ諸国がかつてない政治変動の最中にある地域において、力の真空を作り出すだけである。アメリカは多様な事態に対処できるだけの装備を備えねばならない。こうした観点からすれば、F35開発の現状は由々しき事態である。この問題はアメリカの主力兵器に関わるので、共和党の大統領候補達は来る選挙でバラク・オバマ大統領に挑戦するうえでも、この重要政策課題を多いに語って欲しい。
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