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2012-01-16 00:00
野田内閣は財政再建より復興と日本再生に集中せよ
角田 勝彦
団体役員
1月13日野田内閣の改造直後の各紙世論調査によれば、内閣支持率は横ばいか下落で、不支持率は5割前後に増えた。1月6日、政府は消費税を2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げる税と社会保障の一体改革の素案を決めたが、同じ世論調査を見ると反対が賛成を大きく上回っている。野田首相は改造による支持率回復で政権運営に弾みをつける狙いだったが、効果は得られなかったわけである。首相は一体改革の成否によっては「いろんな判断があるかもしれない」と衆院解散・総選挙にも含みを持たせているが、実際その可能性が高まっている。野田内閣の使命は、一に復興とこれをさきがけとする経済再生であり、財政再建はその先である。無理に手を広げて政局に追い込まれ復興に水を差すより、野田内閣発足時の国民の期待に応え復興に全力を注ぐことが望ましい。
東日本大震災の発生から半年を迎えるのに合わせ朝日新聞が行った全国調査では、政府の半年間の復興取り組みを「評価する」が18%、「評価しない」が67%だった(政府の復興構想会議も昨年11月10日「復興が率直に言って遅すぎる」と苦言を呈している)。原発事故への対応も「評価する」は11%にとどまった。それが野田内閣に対しては、復興に51%が「期待できる」と回答し、原発事故への対応でも、「期待できる」45%が「できない」30%を上回った。昨年9月発足時の朝日新聞世論調査では内閣支持率は53%、不支持率は18%だった。それが内閣改造直後の本年1月には支持率は29%、不支持率は47%になったのである。読売調査でも支持率は9月の65%から1月の37%へ、不支持率は19%から51%へと同じ傾向である。とくに注目すべきは昨年1月菅内閣再改造の時(朝日によれば2010年12月の21%から26%へ上昇)と違い改造によっても昨年12月の31%から本年1月の29%へ下落していることである。読売でも42%から37%への下落である。
一体改革は菅内閣以来の公約であり、野田首相も昨年11月のG20カンヌ・サミットで財政健全化の決意を示し、一体改革を実現するための所要の法律案を2011年度内に国会に提出することを説明しているが、今や意気は上がれど力足らずの感である。それに野田首相が同サミットで全力で取り組んでいると述べた復興について、第3次補正予算と復興増税まで目途を付けたのは評価するが、先は長い。復興庁は発足待ちであるし、昨年12月に政府の国家戦略会議が決めた「日本再生の基本戦略」も、復興を日本再生のさきがけと位置づけ、経済連携の強化や新産業の創出をテコに、新たな成長分野を開拓するとして2020年度まで平均で実質2%、名目3%の高い経済成長目標を掲げたものの具体的内容に乏しく、このままでは看板倒れになりかねない。
一体改革の素案、具体的には政府が通常国会への提出を目指す消費増税法案については、提出にこぎつけても自民党が求めたように国会に設置する特別委員会で検討されることになりそうで、不可分の社会保障制度改革案は早急にまとまりそうにない。消費税引き上げ前に国会議員定数と国家公務員給与の削減を行うべしとの要求もある。要するに消費税率引き上げだけの問題ではないのである。野田首相は1月14日のテレビで、消費税増税を柱とした社会保障と税の一体改革に関し「政治生命を懸けてやり抜く」と強調した。「一体改革と併せ(行政、政治両)改革に結論を出して実現していく。それができるかできないかの暁にはいろんな判断があるかもしれない」と述べ、衆院解散・総選挙にも含みを持たせた。しかし一内閣一課題ともいう。野田内閣は復興と経済再生に一応の目途を付ければ後世から高く評価されよう。財政再建に取り組む力はないことを自覚して玉砕を避けるのが賢明である。理想と現実のバランスをとる政治家としての力量が問われている。
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