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2012-02-14 00:00
「責任野党」は国益を第一に考えた大人の対応を
船田 元
元経済企画庁長官
「防衛については素人だ」と、就任会見で発言して物議を醸した一川前防衛大臣の後任に、田中直紀参議院議員が就任した。まだ日も浅いうちから、またまた「素人」ぶりが露呈する始末。当初から野党の攻撃対象になるのは必至と見られていただけに、野田総理の任命責任は免れないと思われる。田中大臣は言うまでもなく田中角栄元総理の娘婿であり、田中真紀子衆議院議員の夫である。私も全盛期の田中派の末席を汚していたので、田中ご夫妻には何度かお話しする機会を得ている。田中大臣は確かに防衛問題には疎いが、ものごとを真正面から受け止め、極めて正直なお人柄である。だから国会でのくせ玉の多い質問には「まんまと」引っかかってしまう。煙に巻くような答弁やとぼけた答弁は、まず出来ない方と見る。その点ではお気の毒としか言いようがない。
しかし、ことは日本の防衛問題。とりわけ中国の東シナ海進出や対米強行姿勢が目立ってきた昨今、また沖縄の米海兵隊削減と、関連する基地再編問題が山場を迎える昨今、防衛大臣の一挙手一投足は、わが国の安全保障を左右しかねない重要な段階を迎えているのだ。このときの防衛大臣が経験の少ない「素人」で務まるはずはない。この態勢のもとで対応を誤ることになれば、田中大臣の首をすげかえるだけでは済まなくなる。内閣そのものの信頼性が著しく損なわれる。
ところで、なぜこのような人事になってしまったのか。あくまで私の推測だが、民主党内の力関係の結果といってもいいのではないか。執行部に対して常々不満を募らせている小沢前代表に近い勢力が、仲間である一川・山岡前大臣の後任を、どうしても仲間から出したかったのだろう。一川前大臣が参議院議員の枠でなったために、今回も参議院から出したかったのだろう。さらには反対パフォーマンスをやられたら困る田中真紀子衆議院議員に、おとなしくなってもらいたかったのだろう。かつての自民党の派閥順送り人事よりお粗末である。
いずれにしても、国益のためには一日も早く田中大臣にお辞めいただくことが望まれるが、一方で大臣をいじめ続けている野党側にも自覚が足りないのではないか。田中大臣を追及することで国民の歓心を買い、支持率を上げようとするのは、ほどほどにすべきではないか。追及をすればするほど国民世論は逃げていくし、同盟関係にあるアメリカ政府も、日本政府を信用しなくなってしまう。政権奪還を目指す自民党には辛いところだが、ここは「責任野党」として、国益を第一に考えた大人の対応をすべきではないか。
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