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2012-02-16 00:00
安住財務相の為替介入発言は重大問題
高峰 康修
日本国際フォーラム客員主任研究員
10日の衆議院予算委員会で、安住財務相が、昨年10月末から11月初めにかけて実施した円売りドル買い単独介入について、介入開始時と終了時の具体的な数字に言及して、物議を醸している。安住財務相は、自民党の西村康稔委員の質問に対して、「1ドル=75.63円の時点で、介入しないと日本経済に危機的な状況が及ぶということで介入を指示した。78.20円でやめたので、そこの時点で納得したかという話だが、私としては3円近く値を戻し、年末まで2ヶ月間、77~78円台で推移したので、一定の効果はあったと思っている」と述べた。
この発言について、安住氏本人も財務相も、介入の基準を言ったのではないとしているが、為替市場への介入という機微な問題で、数字を言うのは論外である。仮に、介入の基準という意図ではなかったとしても、投機的動きを誘発する原因となる。単独介入というのは、ただでさえ効果の薄いものであるのに、さらに効果を低下させるばかりか、財務相が市場の不安定要因となったということになる。
さらに問題なのは、「協調介入が望ましく、それに向けた努力はするが、単独介入も辞さない」という趣旨のことを強調した点である。為替市場への単独介入は、通貨の切り下げ合戦に繋がる為替操作と受け取られ、国際的非難の対象となりうるというのが、近年の国際的共通認識である。実際、安住財務相が言及した、昨年10月末から11月初めにかけての9兆円超の単独介入に対して、欧米などは不快感を示している。米国は、この件につき、為替政策に関する報告書で言及している。また、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、介入が必要ならば、多国間の枠組みで実施されるべきで、単独で実施されるべきではない、と述べている。意図はどうあれ、数字を挙げつつ、「単独介入を辞さない」と宣言するなど、常識では考えられないことである。この「単独発言も辞さず」とした発言を、国益を守るための力強いメッセージであると評価するのは、とんでもない誤りである。
民主党政権は、為替市場について、今回と同様な失言を繰り返している。菅元首相は、財務相時代に、望ましい円相場は95円台ぐらいだと述べて、「相場の波乱要因になる発言は慎むべきだ」との強い批判を浴びた。また、仙石官房長官(当時)も、2010年の9月に、円相場の防衛ラインは1ドル=82円台と示唆して、同じく厳しい非難にさらされた。いったい、民主党政権は、何回同じ過ちを繰り返して、我が国の国際的信認を失墜させる気か。こんな言動をとれば、協調介入への協力は、ますます得にくくなる。安住財務相の失言は、更迭に値する極めて重大なものである。それが、野党からもマスコミからも通り一遍の批判しか受けていないのは一体どうしたわけであろうか。首をかしげざるを得ない。
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