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2012-02-17 00:00
「消費増税大綱」閣議決定で野田は地雷原に入る
杉浦 正章
政治評論家
「消費増税大綱」を2月17日に閣議決定する首相・野田佳彦の心境は「もう中央突破しかない」というところだろう。地雷原は3月危機から始まって6月危機へと続く。触発が続く荒野を突破しても、会期末には解散・総選挙か、内閣総辞職か、話合い解散かの選択肢しか残っていない状況となる。野田が目をつむって突撃して、火花が散って、その中から何が生まれるかという、近来希な政局の展開に入ることとなる。この期に及んで何を話し合ったかが極めて注目されるのが、16日夜の小沢一郎・鳩山由紀夫・輿石東会談だ。将来中身が浮上すれば、あのときの2時間の会合で流れが出たということになる。情報は、鳩山が「このままいったら党が大変なことになる」と言ったことしか漏れていない。小沢一郎の第一の側近だったはずの輿石は、幹事長になって以来、消費税に関しては完全に野田の路線に歩調を合わせている。一方小沢と鳩山は、消費増税反対を確認し合っている。そのなかで会談の構図を見てきたように予測すれば、まず輿石が、「明日大綱を決定せざるを得ない」と方針を説明、理解を求めた。ここは分かりやすく、くだけた表現を使えば、小沢と鳩山が輿石に「こっち側に戻れよ」と持ちかけ、輿石は消費税だけは野田を裏切るわけにはいかず、言を左右にしたというところではないか。
最後に小鳩は「このままでは子分が黙っちゃいねぇ」とすごんだのだろう。「党が大変なことになる」というのは紛れもなく「分裂するぞ」の脅しでもある。いつ分裂するかと言えば、「増税法案閣議決定の際かもしれん」と小鳩が脅したのだろう。同法案の閣議決定は3月20日に予定されている。民主党政権では法案の閣議決定は党の事前承認を必要とする。それでも野田は初志を貫徹する姿勢だ。増税推進派の態勢は既に固まっている。輿石をはじめ、副総理・岡田克也、政調会長代行・仙谷由人、政調会長・前原誠司ら主要メンバーの姿勢も一致している。閣僚の造反も今のところ出ていない。そして今日の閣議決定が何を意味するかだが、「民主党単独でも増税法案を通す」という意思表示の現れに他ならない。今日決めないと3月末の法案国会提出が事務的にも間に合わないのだ。しかしこの姿勢は、党内と野党を強烈に刺激する。もちろん国会は与野党対決ムードが一段と増幅するだろう。おそらく野党は大きな波動を2度にわたって起こそうとするだろう。
それが3月危機と6月危機となるが、3月危機はまだ“瀬踏み”ともいえる段階ではないか。自民党が場合によっては内閣不信任案を3月の段階で上程する可能性も消えたわけではないが、小沢の動きがまだ定かではない可能性があり、可決は流動的だ。なぜかといえば、小沢は裁判の4月判決を控えて身動きが取れないからだ。今日17日の公判の証拠採用の是非によってもある程度分かるが、裁判がクロと出れば、破れかぶれで不信任案に同調。シロと出れば、堂々と分裂を宣言して、不信任案に同調という構図が考えられるからだ。同調しなくても不信任本会議欠席という、かって福田赳夫が使った手法もある。この場合は不信任を可決しても、分裂の回避が可能だ。従って自民、公明両党の解散戦略は「3月瀬踏み、6月本命」の戦略だろう。
自公の武器は2つある。1つは消費増税法案反対を主軸に置く。他の1つは、赤字国債発行のための予算関連法案の人質化がある。したがって予算が例え4月上旬に自然成立しても、関連法案成立のめどは会期末まで立つまい。上旬には消費増税法案の審議にも入る。したがって4月以降6月21日の会期末までが本格的な地雷原入りとなる。こうした中で野田は増税法案を5月連休明けにも衆院だけは通過させ、様子を見る方針だろう。しかし、たとえ小沢の造反を押さえて、衆院を通過させても、参院でのねじれは成立を不可能とする。そこで野田の言葉「解散しろという野党に対しては、やるべきことをやって、やり抜いて民意を問うことを、はっきり宣言したい」が生きてくる。野党と党内に向けて参院で可決成立しなければ、小泉郵政解散と同じ手法をとるぞという恫喝(どうかつ)である。不信任案が成立した場合にも野田が総辞職を選択することはあり得ない。消費増税への信条に反するからだ。国民に信を問うしか選択は無い。こうした野田と野党、小鳩との激突の火花の中から何が出てくるかだが、考えられる落としどころは、話合い解散しかあるまい。「増税法案成立で野田は納得。解散で野党は納得」の図式だ。いずれにしても小沢グループは選挙惨敗・崩壊の瀬戸際に立たされる。3方1両損ではなく、小沢だけ100両損の構図だ。
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