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2006-10-04 00:00
外交の「入口」と「出口」
鵜野公郎
慶應義塾大学名誉教授
安倍政権は日中、日韓の関係修復から外交をスタートさせた。日中・日韓を外交の「入口」に据えたわけである。しかしこの「入口」には「出口」があるのか。隣国であり歴史的にもつながりの深い日中・日韓を重視すべきであるというのは、「べき」論としては正しく、誰も異論をとなえないであろう。「べき」論と「現実」論は二つとも論点としてはあり得るが、外交は実現可能性を考慮しなければならない。「べき」論だけで進めば、「出口」なしの袋小路に入り込むことになりかねない。
外交が意味をもつためには、日本側の期待だけではなく、中国側、韓国側の政権が意味のある話し合いができる自由度を国内的にも外交的にも持っていなければならない。現実にはこれら両国は、それぞれ異なった国内的な理由から、手足を縛られているのではないか。中国においては、最近の上海における権力がらみと見られる政治的動きに象徴されるように、国内政治的に未だ磐石とはいいがたく、党大会を経て早急に自前の権力基盤を強化していくことが大きな課題となっている。韓国においては北への融和政策に乗り出したものの、その融和策を北に逆手にとられ、日米両国からも国内政治的にも危惧される状態にある。こうした国内要因に加えて、外交面では北朝鮮による7月のミサイル発射、それに続く今回の核実験実施宣言により更に複雑さを加えたが、中国、韓国とも北朝鮮に対する政治的支持を引っ込めることはできない。日本としては、これは北朝鮮の瀬戸際外交だ、時期が具体的でないとして、実験の可能性を否定して済ますわけにはいかない。日本の対応が中韓両国の動きを更に制約することになりかねないにしても、である。
小泉政権の功績は外交に関していえばタブーをつぶし戦略的フリーハンドを得たことであろう。これは日本にとってはアセットである。安倍政権はそのフリーハンドをどう使うのか。小泉政権は日米関係を、アメリカにとって国際政治的に意味のある同盟に仕上げた。中東、中央アジアなどとのコンタクトも試みられた。東南アジア・インド・オーストラリア・ニュージーランドとは経済的な関係は深いものの自由貿易協定の実現など政府レベルの課題を残している。日中、日韓は経済的に密接な関係を築いており人の往来も多く、政府関係の如何にかかわらず、これら隣国との関係が揺らぐことはない。しかし日本が一歩踏み出して政治的対話を試みようにも相手政府は意味のある対話をおこなうための余力を持てない状態である。中韓両国との情報交換は必要であるが、両国とも日本との共同歩調に踏み出すだけの自由度がないことは認識してかからなければならない。「待ち」も重要な外交である。世論が靖国参拝に支持を与えたのも隣国政府の硬直した対日外交を見て国民がこのことを察していたからである。この間、地道にアジア・太平洋との関係強化を図り足元の実体を固めることが上策である。
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