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2012-02-25 00:00
(連載)ロシア、中国の拒否権発動と今後のシリア情勢(2)
水口 章
敬愛大学国際学部教授
ロシアと中国という相対的に封鎖性が高い(監視の目が厳しい)社会空間においても、市民の連帯意識はSNSを通してこれまでより形成されやすくなっており、市民と体制が対立する状況が生まれる蓋然性は高まってきている。このため、両国の政治指導者はSNSへの圧力を高めるとともに市民への監視を強めており、仮に市民運動が起きたとしても、レジューム・チェンジへの道を辿らないよう、体制の若干のリフォームで市民の要求を満たしたという形をつくるための治安政策を準備している。
これは実は、シリアのバッシャール・アサド大統領が政権について以来とってきた国内政策である。同政権は、昨年3月からの6,000人とも言われている市民の死者数は、バアス党体制維持の観点から見れば大きなものではないという認識を持っている。こうした人権に対する認識を、シリアはロシアおよび中国と共有している。ロシアと中国の拒否権行使の理由は、そこにあると言えるのではないだろうか。では、国際社会の対応が行き詰まった現在、シリア問題の今後のシナリオとしてはどのようなものが描けるのだろうか。いくつか挙げてみよう。
(1)ロシアがアサド政権を説得し、バアス党を温存時、アサド・ファミリーを訴追しないとの条件で、同一族が「一時的に」政権から退く、(2)国連をはじめ国際社会は十分な対応をとることができず、市民の抗議活動はアサド政権によって「力」で鎮圧される、(3)国際社会が反体制の「自由シリア軍」に武器・資金援助を行い、内戦状況が長期化する、(4)バッシャール・アサド大統領、弟のマーヘル・アサド共和国防衛隊第4師団司令官らの要人が暗殺され、反体制側(国民評議会)との協議が合意される、(5)国際社会が有志連合を形成し、経済制裁を強化する措置をとった上で、その効果を見て空爆による国際介入を行う。そのことで、体制側が反体制側との協議を求めて合意が成立する(アサド政権の退陣)。
今後のシリア情勢を考える上では、以前に体制から離反したハッダーム前副大統領が指摘するように、イランとロシアの同盟的な動き、そしてイラン核開発問題、さらにはイラク北部のクルド自治政府の独立の動き(この3月に独立宣言を行うとの観測もある)などの国際的要因も考慮する必要がある。(おわり)
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