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2012-03-01 00:00
「小沢切り」と「話し合い解散」が垣間見える野田・谷垣極秘会談
杉浦 正章
政治評論家
事前に極秘会談があったことを前提にすると、いつもとトーンの違う党首会談の“謎”が見えてくる。どうみてもおかしかったのだ。これまでのようなぎすぎす感が双方になく、自民党総裁・谷垣禎一も、公明党代表・山口那津男も、条件を挙げて「クリヤーすれば与野党協議に応ずる」ような感触を示している。要するに討論は出来レースであった可能性が濃厚なのだ。だとすれば、「小沢切り」で消費増税での政界再編や話し合い解散が見えてくるのだが、実態は今後の展開に待つしかあるまい。2月29日の永田町の関心は、党首討論より、日テレの報道の真偽に集中した。日テレは、野田と谷垣が25日に極秘会談を行い、消費増税を含む社会保障と税の一体改革や衆院「1票の格差」是正への打開策を話し合った、と大スクープを報じたのだ。日経が追いかけた情報によると、野田は国会近くのホテルの日本料理店で官房長官・藤村修と約1時間昼食をともにしたことになっているが、その間、谷垣と極秘に会っていたという。同紙は「29日の政府・民主三役会議に出席した幹部によると、藤村が『外向けには会っていないということだ』と説明した」と報じている。ということは、確かに会ったことになるが、野田は「会っていません」と主張し、谷垣も否定している。
2人ともうそをついているのだろう。党首討論の展開を見れば、極秘会談があった可能性が十分うかがえる。谷垣はこれまでのようにスピッツ型の吠え方をピタリとやめた。そのせいか、双方の質疑応答が論理的に統一されて、かみ合う感じが濃厚だった。従来の激突、物別れ、言いっ放しではなく、次につなげる側面が出てきたのだ。例えば谷垣の「新年金制度の看板を外さないなら、一緒に議論できるところもなかなか議論できない。新年金制度をどうするつもりなのか。棚上げなのか、撤回なのかを聞きたい」と同制度の一体改革からの切り離しを質している点が注目される。もともと実現の可能性のない新年金制度など、野田の本心では未練はないことを見透かした条件提示と受け取れる。野田が近いうちに同制度を断念すれば、条件はクリヤーされることになる。一方で、谷垣が「小沢の乱」を質したのに対して野田は「きちんと手順を踏んで、今の方向を決めているし、今度は年度内に法案を提出する。51対49の党内世論でも、手続きを踏んで決めたら、みんなで頑張っていくということは、皆さんの前に示したい」と述べた。「51対49」というきわどい数字をあえて提示したのは、野田の並々ならぬ決意の表明と受け取る事が出来る。場合によっては、「小沢切り」をしてでも消費税法案の閣議決定と成立を成し遂げる、覚悟の表明に他ならない。
さらに重要なポイントは、解散・総選挙問題だ。いつもなら冒頭に質し、最後にも質すように、解散にこだわる谷垣が、時間切れになってから聞いたのだ。その前の質問で「時間がない」と時間を気にしていたから、これは意図的に時間切れを狙って、野田への配慮の格好づけをしたと受け取れる。それも質問内容は「野田総理大臣が、本当に消費税率の引き上げを成し遂げたいならば、国民との信頼関係をきっちり作り直していくこと、つまり、解散することだ。それをきちんとやれば、私たちと方向性が合って、協力する道はいくらでも開ける」と、「協力する道」に言及している。これは極秘会談で「話し合い解散」まで踏み込んだ可能性があることを物語るのではないか。あえて回答を求めないのは、もう済んだことであった可能性がある。山口が消費税法案と社会保障関係の法案が「ばらばらでは一体的な議論が成り立たない」と社会保障関連法案の早期提出を要求したことが注目される。これは野田が早期提出をすれば済む話であろう。条件提示と受け取れるのだ。
このようなやりとりから出てきた構図は、与野党協議が必ずしも不可能ではないという方向性だ。新年金制度を撤回し、社会保障関連法案の早期提出を図れば条件は整う流れとなる。野田の消費増税法案への決意表明からは、これに反対する小沢一派を切ってでも成し遂げようとする意志が濃厚にうかがえる。谷垣にしてみれば、話し合い解散を勝ち取れば御の字だし、野田にしてみれば、消費増税を達成できる。そのポイントをトップ同士の極秘会談が見逃すはずはない。従って政局の流れは、増税反対で倒閣路線をとる小沢とそのグループの孤立化が見え始めてきた。小沢を除いた「消費税再編」すらうかがえるし、解散も話し合った重要な会談であったのだろう。もちろん維新の会も存在感が薄れる。問題は野田と谷垣が今後党内的にどう説明して、秘密会談の内容を実現させてゆくかだ。
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