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2012-03-01 00:00
イランとの独自の関係構築を目指すべき
船田 元
元経済企画庁長官
「ホルムズ海峡」といえば、アラビア半島の棘の部分とイランのあるユーラシア大陸が、30キロメートル幅の海峡を形成しているところだ。1970年代に通産省OBだった堺屋太一さんが、ホルムズ海峡に紛争が発生した場合は日本に石油が来なくなるという、近未来ドキュメント『油断』を書いて、ベストセラーになった。石油ショックの片棒を担いだ感があるが、今回は相当な実現可能性があるかもしれない。世界有数の石油輸出国・イランが、IAEAはじめ世界各国から、核開発を進めているのではないかとの疑惑がもたれている。これに最も敏感に反応したのがイスラエル。
同国はかつてイラクが原発を無断で稼動させてことに危機感を募らせ、先制攻撃でイラクの各施設を爆破している。その次はアメリカであり、1979年のホメイニ師によるイスラム革命を警戒して、様々な介入を試みている。革命最中のアメリカ大使館員人質事件と、その奪還計画が失敗に終わったことで、極端に関係は冷え切ってしまった。イランは現在、イスラム原理主義に傾倒しつつあるアフマディネジャド大統領の下、欧米諸国や日本を含むアジア諸国との関係を急速に悪化させており、アメリカが主導している対イラン制裁を続けるならば、ホルムズ海峡を軍事的に封鎖すると警告を発している。
日本はイランから年間石油消費量の1割を購入している。さらにサウジアラビアやクエートなどから8割以上を購入しており、そのほとんどがホルムズ海峡を通過している。封鎖となればまさに「油断」となり、堺屋太一が指摘した日本の危機が現実のものとなる。東電福島原発事故の影響で原発の再稼動がほとんど不可能になった今日、その影響は計り知れない。実は日本はかつてのイランのパーレビ国王と親密な関係にあった。イランの原油をスムーズに輸入するため、イランに石油化学工業を根付かせようと、IJPC(イラン・ジャパン石化)プロジェクトを立ち上げた。相当な金額を現地に投資したと記憶するが、イラン革命で撤退を余儀なくされてしまった。
そこで日本のとるべき対応だが、大変難しい選択を迫られるだろう。アメリカの言い分を聞いて経済制裁措置に踏み切れば、イラン原油は止まってしまうだろう。一方イランと少しでも仲良くすれば、同盟国アメリカの心象は極めて悪くなり、沖縄米軍の再編計画実行にも影を落とすことになるだろう。しかし私は「背は腹に代えられない」との決意のもと、イランとの独自の関係構築を模索することを目指すべきではないか。日本とイランの友好関係は、かつて中東諸国の中でも最も親密であったことを忘れてはなるまい。
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