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2006-10-07 00:00
連載投稿(2)日本の国際的なプレゼンスの低下
塚崎公義
久留米大学助教授
こうした中で、日本はどうでしょうか。筆者は今後数年間の日本経済に関しては比較的楽観していますが、30年後となると、明るい材料を見つけるのは大変です。人口構成を考えただけでも少子高齢化が進めば人口が減り、高齢者の比率が高まり、いかにも経済活力のなさそうなイメージの国になります。更に心配なのが、教育と国民性と文化の問題です。日本経済がこれだけ発展したのは教育レベルが高かったことに加えて、真面目な国民性と恥を重んじる文化があったからでしょう。日本製品が高い品質を誇っているのは、日本人の労働者が真面目に働いたことに加えて、他人に迷惑をかけることを恥と考える文化を持っていたからではないでしょうか。そうだとすると、教育水準も国民性も文化も急激に変化しつつある日本が、30年後も高品質の製品を作り続けていくことが可能なのか、いささか心もとないものがあります。
日本を「衰退国家」と呼ぶことに対しては、さまざまな反論があると思います。国内経済だけを考えれば、「一人当たりのGDPが減らなければ生活水準が維持できるので問題ない」と言えるのかも知れません。しかし、国際政治の上では、他国との相対的な関係で見た国際的なプレゼンスが低下していく「衰退国家」と見做されてしまうリスクは大きいでしょう。そうだとすると、日本はどういう外交戦略を採るべきなのでしょうか。
日本が「円の国際化」や「アジア共同体」を目指しても、たとえば中国は「30年後には人民元がアジアの共通通貨に、中国がアジアの盟主になるのだから、日本が何か言っても無視していればよい。時間を稼げば当方が有利になるのだから」と考えるかもしれません。他のアジア諸国も、「今のわが国がドルの代わりに円を使うことはかまわないが、30年後には結局人民元を使うことになるのだろう。それならば、それまでドルを使っていよう」と考えるかもしれません。日本が自分で「アジアのリーダーとして」などと考えていても、アジア諸国は日本のことを単なるレイムダックとしか見なくなるかもしれません。
日中関係はといえば、今でこそ中国が日本の資本を必要としているから「政冷経熱」などと言っていますが、中国国内の資本が育ってくれば、日本は中国にとって「必要のない国」になってしまうかもしれません。そうなってからでは、日中外交交渉は何も進まないでしょう。中国側が妥協するインセンティブを失ってしまうからです。中国側はそうなることを予想した上で時間稼ぎをするかもしれません。尖閣列島の領有権問題も、時間が経てば経つほど中国が有利になると思っているかもしれません。
更に言えば、軍事的に中国が強大化して米国が衰退していけば、米国の防衛ラインがハワイまで後退し、韓国や日本は中国の影響下に入ることになるかもしれません。反日教育を受けた中国の若者たちが30年後には中国の各界の中心に座っているだろうことを考えると、これは大いに憂慮すべき状態と言えるでしょう。(つづく)
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