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2012-03-11 00:00
日本は多民族国家に向かうべし
松井 啓
元駐カザフスタン大使
日本は「国際化」すべしと言われてから久しく、ようやく大学改革が始まろうとしているが、他のアジア諸国に比べても日本国内の国際化の速度は遅い。他方、2010年をピークとして人口は下降線をたどり、少子高齢化が進んでいる。一般的に少子高齢化が進めば需要が低迷し、生産活動は縮小し、経済は低下し、国力は弱化すると言われている。その対策の一つとしては、若年人口を増やし、安定した労働力人口の確保が必要である。一時期そのためには外国人労働力を入れるべしと日系ブラジルを受入れ、また擬似研修制度で中国を始め近隣諸国から若年労働者を中小企業や農村部で受け入れたが、不況の影響等もあり成果は芳しくなかった。更に、タイやフィリピンの青年を看護師や介護師として受入る制度ができたが、日本語の「壁」や受入体制の不備から時間がかかると報じられている。発想の転換が必要である。日本は純血主義、ガラパゴス現象を脱して内なる国際化を進め多民族国家となることを目指してはどうであろうか。実行の段階で失敗したが、日本はアジア近隣諸国との対等な関係の共存共栄を目指した時期もあった。今後10年、20年を見越した日本の国益に沿う活力のある調和のとれた社会を生み出すための長期的戦力を立て、試行錯誤を繰り返しつつも徐々にこれを実現していく心構えが必要である。
シンガポールはかつて首相リーカンユー指導の下に国際化を始め、今では労働力の三分の一は移民労働者であり、元々の中国系、マレー系に加え、インド、パキスタン、近隣アセアン諸国からも多くの移民を受入れ、ジョブハンティング、ヘッドハンティングの格好の場所となっている。しかし無秩序に受け入れているわけではない。国籍、職種による受入人数の割当制、労働許可制度、雇用制限、外国人雇用税等により未熟練労働者を管理している。他方ドイツは、経済成長華やかな頃、大量のトルコ労働者を受入れた結果として種々社会的軋轢が生じた経験に学び、移民の受け入れと社会統合をセットとした移民受入れ体制を整え、特定地域への集中やゲットー化対策を取っている由。フランスは旧植民地からのアラブ系移民が若年層の失業などが引き金となってデモで暴徒化したことを教訓に、移民の「フランス国民化」教育を進める一方、居住環境の改善、多文化共生、包容力ある社会の構築に努めていると報じられている。インドやパキスタン、香港などの旧植民地からの移民が多いイギリス、既に多民族大国のアメリカやオーストラリアの例も参考にして、今後の移民受け入れ、定住、同化、統合策を検討する必要がある。
日本はこれまで外国単純労働者の受け入れは短期的であるべしとの主張が強く、ブラジル系移民等の短期受入れ経験はあるが、人手不足と少子高齢化対策の観点からは、来日し折角日本語を習得し、文化や生活習慣、生活の知恵を身に付けた人達を断ち切り、新たに不慣れな人達を招くより、既に就職している外国人に定住を促し「新しい日本人」になってもらう方が彼我にとって時間・費用の観点からもメリットが大きいであろう。移民及び彼らの子孫が日本人として定住し、日本社会の一部となり、若年労働人口の増加に寄与し、新しい日本を形成するよう、受入体制の整備、環境づくり、特に子供達の学校教育(補助教員の追加等)、保健・社会福祉制度を整えるべきである。担当行政組織の整理、地域コミュニティーの抱擁力強化のための援助も重要である。
更に、従来のような擬似研修制度による農業や中小製造業による受け入れでなく、大企業が率先して雇用、受入れ、労働環境・社会環境整備のモデルを示していくことが正当であろう。アジア諸国の人々の場合は家族の絆を大切にするので(家族主義は日本人も再考の必要があろう)、大企業なら幸せな家庭を築けるような環境を整備することは容易であろう。最後に、多民族国家シンガポールでは意思疎通の共通な道具として特異な英語(シングリッシュ)が話されている。日本が多民族国家を目指すなら、国籍や人種による癖や訛りのある変則日本語も許容する実用日本語(ニッポニーズ)を開発してはどうか。既に、JICAや、建設現場などでは職場の意志伝達の手段として種々考案されているようであるが、少なくとも人称代名詞の簡素化と数詞の簡略化は必要である。これも日本語の国際化の第一歩である。正統日本語(国語)は追って身につける機会を十分に与える必要があることは言うまでもない。
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