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2012-03-19 00:00
中国のイラン政策を注視せよ
河村 洋
市民運動家
本欄への2011年10月25、27日付の連載投稿「中国の程永華駐日大使の講演を聴いて」で、「中央アジアから中東に向かう中国の西方拡大がアジアのシーレーンに向かう東方拡大に劣らず危険だ」と主張した。特に中国の対イランおよび対パキスタン関係は世界の安全保障に重大な影響を与えている。中国による両国への原子力およびミサイル技術の支援は、核不拡散には悪影響を与えている。また、「アメリカがイラクとアフガニスタンを含めた中東から性急に撤退すれば、中国の浸透を招きかねない」とも警告した。そうした事情から、「中国が重視するのは国際公益か、それとも欧米との地政学的競合か」と問いかけた。しかし昨年11月のIAEA報告書以来、イラン核危機をめぐる緊張が高まるに従って中国とイランの関係は岐路に立たされている。これは欧米とアジアの民主国家にとって、中国と本当に平和的でウィンウィンの関係が築けるかどうかの試金石である。
シャー体制の崩壊以来、イランは中国の中東政策の要石である。1987年に、中国はホルムズ海峡の安全に深刻な影響を及ぼしかねないシルクワーム地対艦ミサイルを、秘密裡にイランに輸出していたが、レーガン政権の強い要求で供与を停止した。中国は長年にわたってイランに軍事援助を行なってきたばかりか、中国軍の指導者達はイランをスエズ以東の海洋支配の拠点にしようとさえ考えてきた。中国が世界平和と中東の安全保障のために、そうした積年の野心を本当に捨て去るのだろうか?非常に興味深いことに、中国とイランはイデオロギーと戦略のうえで、欧米への二大対抗勢力となっている。ここでマニラ在住の外交政策アナリストであるジャバド・ヘイダリアン氏が今年の3月にディプロマット・マガジンに投稿した論文を参照し、核危機の中での中国・イラン関係がどのようなものかを模索したい。ヘイダリアン氏は中国とイランの両国には「ペルシア帝国と中華帝国はアジア大陸の東西を代表する大国であった」と指摘する。そして、「経済面では、中国とイランは相互補完関係にある。イランは中国の経済成長の需要を満たすべく、石油と天然ガスの主要供給国である。欧米の制裁強化によって、イランは中国市場への依存度を一層高めている。しかし中国には石油の輸入のためにもホルムズ海峡が安全である必要がある」とヘイダリアン氏は評している。そのため「中国はこの地域でのイランの軍事行動には反対で、核開発の疑念を抱かれている場所には国際査察に対する透明性を高めるべきだと要求している」と言う。
問題は、ヘイダリアン氏の分析がやや楽観的なことである。中国が安全保障政策で、そこまで欧米と歩み寄るのだろうか?核不拡散は中国にとっても欧米にとっても安全保障上の重要課題である。しかし中国にとってイランの核保有は欧米がとらえるほど深刻な問題ではないので、双方の間でウィンウィン関係の構築は容易ではない。中国はイランが核保有国となっても良好な関係を保てるが、それは両国がイデオロギーと地政学のうえで欧米と対抗してゆくという共通の立場だからである。また両国の「歴史認識」も重複している。イラクの場合で中国が米英の介入に激しく反対したのは、アメリカによる一極支配の世界秩序を恐れたためである。それに比べれば、中国にとってサダム・フセインの核保有の野望の脅威および独裁者とテロリストの潜在的な関係の排除はさほど重要ではなかった。中国は国際公益よりも欧米相手のパワー・ポリティックスを優先しかねないのである。
本欄への2月15、16、17日の連載投稿「イデオロギー上、イランは日本の敵である!」で、「新党改革の舛添要一代表の対中認識が甘い」と批判したことがあったが、「日本がイスラエルも含めた欧米同盟諸国とともにイランへの制裁を強める中で、中国がビジネス・チャンスを拡大するような事態を許してはならない」と舛添氏が述べたことには同意する。私が批判的に述べた理由は、我が国はイラン危機への対処で中国に協力を「お願い」する立場ではないからである。私にはそうした態度が叩頭を連想させるので、ジョージ・マカートニーとウイリアム・アマーストと同様に、それには「ノー」を突きつけるのみである。以上より、中国とイランの間の根深い関係を強く注視し、この核危機に対処しなければならない。
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