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2012-04-02 00:00
カギ握る中国の北朝鮮説得
鍋嶋 敬三
評論家
北朝鮮による長距離弾道ミサイルの発射が迫っている。金日成生誕100周年の4月15日に向けて、同12日から16日の間に「人工衛星」を打ち上げると3月16日に発表した。米国との間で長距離弾道ミサイルの発射と核実験の凍結、ウラン濃縮活動の一時停止を2月29日に合意して僅か2週間余で約束を反故にするものである。ソウルでの核安全保障サミット開催を控えての発表は、朝鮮半島非核化への挑戦であり、2009年の地下核実験を受けた国連安全保障理事会の制裁決議1874号に反する。故金正日総書記・国防委員長時代の瀬戸際外交が早くも姿を現した。オバマ米大統領は北朝鮮の行為は「報われない」と警告、米朝合意の食糧24万トン支援の中断を決めた。北朝鮮は「衛星打ち上げは故金正日総書記の遺訓に基づき以前から推進してきた」と正当性を主張しているが、金正恩新体制による国際社会への挑戦であることに変わりはない。
カギを握るのは中国である。北朝鮮の唯一・最大の後ろ盾であり、制裁決議による国際社会の締め付けでさらに影響力が強まっている。国連安保理常任理事国としての中国の責任は大きい。北朝鮮が発射を強行すれば、中国のメンツは丸つぶれになる。中国は北朝鮮に厳しく発射中止を要求すべきである。この20年間の北朝鮮による核・ミサイル開発は小国が大国を翻弄してきた外交の典型である。朝鮮半島の非核化のための6カ国協議の舞台を利用しながら、対米直接交渉を主眼に揺さぶりをかけてきた。米国の歴代政権は対北朝鮮外交では「甘さ」をしばしば露呈した。G.W.ブッシュ政権末期の2008年6月に、北朝鮮が核開発に手を染めないと約束したとしてテロ支援国家指定を解除したが、1年後には北朝鮮が2度目の核実験を強行するという外交的失敗を演じた。中国も朝鮮半島の安定が第一と、北朝鮮に対してはれ物に触るように接してきた。北朝鮮の体制崩壊が招くのは大量の難民だけではない。中国にとっては緩衝地帯がなくなり、直接米韓と対峙する危険を招く。そのようなシナリオには堪えられない。国連の制裁決議の効果も厳格に実施するためには、国境を接する中国の真摯な協力無しにはザル法も同然で、結局は北朝鮮の国際秩序無視の振る舞いがまかり通る構図が何年も続いてきた。
中国の対応についてうがった見方をすれば、北朝鮮の体制崩壊による朝鮮半島の混乱のコストに堪えられるのかとイラク、アフガニスタン戦争、イランの核問題で手一杯の米国の足元を見透かして、北朝鮮制裁強化をけん制してきたとも言える。核サミットで訪韓したオバマ大統領が、中国は何十年も北朝鮮の行動を改めさせることに失敗してきたと、北朝鮮の暴走を抑えられない中国に対するいら立ちの言葉をぶつけ、厳しい中国観を示した。この発言を受けた米中首脳会談で故錦涛国家主席は、北朝鮮の行動を「深刻に受け止め」、「北朝鮮に懸念を表明した」ことをローズ米大統領副補佐官が明らかにした。この言葉通りであれば、ミサイル発射の中止という外交的成果を挙げることが安保理常任理事国、6カ国協議の議長国としての中国の責務である。
北朝鮮のミサイル開発は1998年テポドン1、2006年には失敗したテポドン2、2009年に「人工衛星」と称したテポドン2(または3段式にした派生型)の発射実験をし、後の2回の同じ年には地下核実験も実施した。今回も同じ道筋をたどる可能性がある。長距離弾道ミサイルに搭載する核弾頭小型化の開発も進んでいると見られるだけに、ミサイル発射が実行されれば安全保障上の脅威が一気に高まるのは避けられない。
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