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2012-04-10 00:00
野田は“譲歩戦略”で谷垣を追い込め
杉浦 正章
政治評論家
まるで忠臣蔵の浅野内匠頭をいじめる吉良上野介のように見える。自民党総裁・谷垣禎一だ。次々に難題を持ち出し、「消費増税法案成立前の解散」に首相・野田佳彦を追い込もうとする。その手段として消費税の政局化を狙っているとしかみえない。野田からの党首会談の申し入れも拒否した。その代わりに4月11日に党首討論に応ずるという。野田にとっては党首討論が消費増税実現を左右しかねない正念場となった。このさい野田は“抱きつき”ついでに、最低保障年金など譲歩できるものは徹底的に譲歩して、谷垣を追い込むという手もある。谷垣は、何かの一つ覚えのように「消費増税マニフェスト違反」と「増税前の解散」を繰り返していたかと思えば、 交付国債、最低保障年金の撤回を要求。「小沢切り」を主張して、今度は消費増税法案早期審議入りに難色だ。揚げ句の果てに、8日の記者会見で「対立点はたくさんある。その一つを引っ込めたらどうだという議論は問題の矮小(わいしょう)化だ」と述べ、ハードルを次々に高く設定して行く構えだ。これでは2月25日の“極秘党首会談効果”もどこかにすっ飛んでしまいかねない。これに対して自民党内では元首相・森喜朗をはじめとして、前政調会長・石破茂らが妥協論を繰り返し主張。元幹事長・古賀誠が独自ルートで大連立への動きを水面下で始めている。野田が小沢グループという獅子身中の虫を抱えているように、谷垣の抱える時限爆弾も深刻だ。
谷垣はこの際消費増税実現前の解散などにこだわるべきではない。いずれにしても、解散はもう時間の問題であり、前か後かは時間的には無意味だ。同じ「話し合い解散」でも、消費税成立前でなく、成立後の解散確約でも、自民党にとって十分有利なポジションを獲得できるものだろう。既に指摘したように、一番遅れても秋の臨時国会冒頭解散も含めた早期解散の約束であれば、問題はないはずだ。野田を増税前の破れかぶれ解散に追い込んで、一過性の旋風に過ぎない「維新の会」などという鬼っ子に漁夫の利を占めさせてはなるまい。だいいち自民党は9日発表した衆院選マニフェストで、消費税率を「当面10%」とする方針を打ち出しているではないか。谷垣の姿勢は矛盾撞着に満ちている。この際、党首会談でじっくりと意思疎通を図るときなのに、党首討論という衆人環視の場で議論をすれば、極秘会談で積み上げた信頼関係が脆くも崩れ去る可能性も否定出来ない。
一方、野田も、これまで牙を隠してきた幹事長・輿石東が、「継続審議」狙いとも受け取れる微妙な動きを生じさせ、対応を迫られている。法案の早期審議入りにこだわらない感触を見せ始めたのだ。連休明けの審議入りを明らかに容認する発言をしているのだ。肝心の幹事長が小沢戦略に組み入れられていたとすれば、野田の立場は、風前の灯となる。当然、野田は民・自党首会談で小沢・輿石に巻き返しをしたいところだろう。しかし、党首討論でも活用の仕方によってはかなりの効果を生じさせることが可能だ。それはこの際譲歩すべきは思い切って徹底的に譲歩するのだ。小の虫などはいくらでも殺してよい。大の虫を生かすのだ。先に党内を説得したときに、やる気など全くない再増税法案を大綱に紛れ込ませておいて、最終的に譲歩の材料に使ってこれを撤回したように、既に組み込まれている政策で“お家芸”の譲歩に踏み切るのだ。まず、7万円の最低保障年金と年金一元化の主張撤回だ。もともと年金制度を根本的に変えることなど付け焼き刃でできるものではない。ましてや来年法案提出など不可能に近い。これを撤回するのだ。
つぎに、誰が見ても粉飾予算にみえる「交付国債」などという事実上の赤字国債を撤回することだ。年金財源2.6兆円を一般会計に計上せず、赤字国債の新規発行額を11年度並みの約44兆円に抑えた悪評高い“やりくり国債”だ。もともと政府・与党内には予算関連法案成立のための譲歩案として組み込んだという説があり、これを削除してしまうことには何の抵抗もないはずだ。赤字国債を追加発行する12年度補正予算案を編成すれば対応は可能なはずだ。つぎに原発再稼働にもつながる「原子力規制庁」設置法案でも、先に自民党がまとめた独自法案に“抱きつく”ことだ。原子力庁の発足には原子力安全改革法の成立が必要だ。妥協で国会審議に入れていない状況を早期に打開するのだ。これだけ譲歩した上で、谷垣の言う「マニフェスト違反」をさっさと認めて、謝ってしまうことである。消費増税という大事を成し遂げるためには、これら一連の譲歩など、些事に過ぎない。これらの譲歩を野田は党首討論で谷垣に示すのだ。分裂気味の小沢グループの反撃などに気を遣っているひまはない。自民党抱き込みには、これら一連の譲歩しかない。それも今直ちに譲歩することにより、消費増税法案の早期審議入りを実現するのだ。はやりにはやっている谷垣を、野田の譲歩によって、前につんのめるくらいの立場に置いてしまうのだ。もちろん全国紙全紙が消費増税を支持しており、譲歩を重ねる野田は支持され、抵抗する谷垣に批判の矛先が向く可能性が高い。
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