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2012-04-11 00:00
日本経済を襲う2つの国際危機
藤井 厳喜
ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ・オブ・ジャパン代表取締役
日本経済を直撃する可能性のある国際政治危機は、2つあります。第1は、中国における薄煕来・重慶書記の失脚事件です。この共産党のトップレベルの内紛は、中国共産党支配体制そのものを崩壊させるきっかけになるかもしれません。そうすると、中国に進出している日本企業は大きな被害を受けることになるでしょう。第2は、イランの核武装を巡る中東情勢です。特に、イスラエルのイラン核施設攻撃の可能性が取りざたされています。もしこれが起これば、世界の原油価格は高騰し、これまた日本経済に大きなダメージを与える事になるでしょう。
まず薄煕来の失脚事件について見ると、この事件の中心人物の1人(王立軍)が、アメリカ領事館に駆け込んでいます。 アメリカ自身が、かなりの機密情報を掴んだ可能性が高いのです。米中対立関係がエスカレートする中で、アメリカはこの機密情報を、中国弱体化の為にフルに利用することでしょう。第2の問題点は、日本の財界人の中には、対中パイプとして、薄煕来に頼り切っていることが多いということです。 これは薄煕来の父の薄一波の時から続いています。 薄煕来の失脚は、多くの日本企業にとって、中国における人脈の喪失を意味するのです。共産党体制が崩壊すれば、社会は大動乱に陥ります。 こういった時に、企業を防衛してくれる人脈がなければ、日本企業や駐在日本人は、暴動の無抵抗な被害者になってしまうでしょう。
中東に目を転じれば、イスラエルがイランの核開発を阻止したいと考えている事はよく知られています。 その際の協力者として、既に軍事的な友好関係にあるアゼルバイジャンの空軍基地を利用するという案が浮上しています。イスラエルから飛び立った攻撃機が、イランで軍事作戦を行ない、その後、アゼルバイジャンに逃避すれば、軍事作戦はイスラエルに帰投する場合に比べて、かなり簡単になります。オバマ政権は、イスラエルのイラン攻撃は何としても防ごうとしています。何故なら、そんな事件が起きれば、中東の政治情勢が大混乱となり、原油価格が高騰するからです。そうすれば、アメリカ国内のガソリン価格が急騰し、11月の大統領選挙での再選が難しくなります。オバマ政権は恐らく、「攻撃をやるなら来年2013年にまで遅らせてくれ」とイスラエルに懇願しているに違いありません。「2013年にやるならば、アメリカは空中給油機やバンカーバスターを供与する用意がある」とイスラエルを説得しているのでしょう。
私自身の予測としても、今年中にイスラエルがイランを攻撃する可能性は極めて低いと思います。イスラエルとしては、アメリカとオバマ政権に大きな貸しを作りながら、イラン攻撃の様々なオプションを考慮中に違いありません。イランも、アメリカの経済制裁に反発して、ホルムズ海峡の閉鎖について言及しています。 米海軍の実力をもってすれば、ホルムズのイランによる閉鎖は不可能です。しかし、そこで軍事紛争が勃発したというだけで、原油価格は急騰し、オバマの再選は非常に難しくなります。オバマ政権としては、イランに向けてもまた、いくつかのバックチャンネルを通じて、自制を要求しています。中国情勢にしろ、中東情勢にしろ、一見日本経済と関係ないように見えていながら、もし大事件が起きれば、日本経済は大きな損害を被ります。そういう日本経済の脆弱な状況を全く無視して、増税一直線にまい進しているのが野田民主党政権です。早く政権交代を行ない、国際情勢を十分に理解しながら国益を拡大させることのできる新政権を作らなければならないと思います。
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