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2012-04-13 00:00
「想定外」をなくす勇気が必要
船田 元
元経済企画庁長官
昨年の東日本大震災の後、至るところで「想定外」という言葉が聞かれた。千年に一度というマグニチュード9.0の激震と、30メートルを超える大津波という現実を受け入れるには、そう表現するしか方法がなかったかもしれない。あるいは福島第一原発事故の責任を、この言葉で軽減させたかった関係者がいたかもしれない。しかしいつまでも「想定外」に頼っていては、今後起こりうるであろう未曾有の災害を未然に防ぐことは、不可能になる。
また先の大震災の教訓が、生かされない恐れもある。「想定外」という言葉で逃げない社会を、我々は目指さなければならない。そうした中、ある防災研究機関が「南海トラフ」に起因する大地震の予想を発表した。仮に東海地震、東南海地震、南海地震が同時に発生した場合、震度7という激震が襲う範囲は、従来の予想の2倍以上になるという。沿岸に押し寄せる津波の高さは、一部で30メートルを超えるという。
東日本大震災では3つの大地震が連動して起こったとされているので、この想定は蓋然性がある。ある人は、このような予想を発表すると、国民に無用な心配を与え、パニックを与えることすらあると指摘する。しかし東日本大震災で防げなかった未曾有の大災害を少しでも減じるには、あらゆる可能性を国民に知らせることが重要ではないか。
予測を冷静に受け止め、何をすればいいかを考え、備えをはじめることが、賢明な日本人には出来るはずだからだ。「想定外」をつくらない努力は、時として我々の生活を変えなければならないこともある。大きな負担を伴うことも避けられない。しかしこれは昨年の大震災から得られた貴重な教訓であり、政治も行政も国民も、協働して取り組まなければならない国家プロジェクトである。
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