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2012-04-16 00:00
イラン問題と日本の政策
水口 章
敬愛大学国際学部教授
3月30日、クリントン米国務長官がサウジアラビアのリヤドを訪問し、アブドゥッラー国王と会談した。同会談では、シリアおよびイラン情勢に加え、原油増産が協議された。オバマ大統領は、これを受け、「米国防権限法」に基づき、イランの中央銀行との取引を行っている外国金融機関に対する制裁を発動することを承認した。これにより、イラン産原油取引が制限されることとなった。さらに、EUがイラン産原油を積んだ船舶への再保険を禁止したため、中国、日本などの損保会社がイラン産原油取引に対する保険を行わなくなっている。これらの措置によって、イランの石油収入は減少していくと考えられる。
こうした状況にあるイランに鳩山元総理が、日本政府や民主党の意向とは別に、訪問することとなった。この鳩山氏の行動については、野党のみならず野田首相、玄葉外相も国会答弁で批判的な発言を行っている。一方、鳩山氏は議員外交も含めて、「外交の一元化」に対する批判的見解を表明した。日本の対外政策は憲法前文に謳われている内容を理念として、その実現に向けて対外戦略、対外政策を立案し、外交政策、外交交渉を行っている。この主たる事務を担っているのが外務省であり、外務省の下での外交の一元化が継続されてきた。しかしグローバル化の深化にともない、国際交流活動を自治体やNGOなどが行うようになり、また、政府内では外務省以外の省庁も外交を行うケースが増えてきた。鳩山氏のイラン訪問も、こうした多元外交の一つだと言える。
さて、ここで問題となるのは、外交を担う人々がどれだけ「国益」や「外交理念」についての共通認識を持っているかである。これが不十分だと、外交は一貫性を失うことになりかねない。果たして、鳩山元総理のイラン訪問の目的は何だったのだろうか。どうも、米・イラン関係を仲介するといった国際益のためというよりは、日本国内の企業(石油関連企業)やエネルギー関連問題などの国内要因で動いたように見える。かつて、日本の外務省は、米国・イラン関係のパイプ役を果たし、レバノンでの米国関係者の釈放に関与したことがある。
しかし、今回、そうした役割を鳩山氏が担っているとは考えにくい。なぜなら、米国はイランとの対話は自らできると考えているからだ。そうだとすると、鳩山氏はイスラエルのイラン攻撃は本気であり、イランは国際的協議のテーブルに着くべきとの助言をしようというのだろうか。今回の鳩山氏のイランへの議員外交は、国連安保理で対イラン制裁に消極的な中国訪問後である。その時期に、米国が日本に対して疑念をもつような行動は国益にかなうとは言えないだろう。沖縄の米軍基地移転問題と同じ轍を踏まないことを願う。
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