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2012-04-19 00:00
朝鮮半島の非核化呼びかけは検討に値する
松井 啓
元駐カザフスタン大使
4月13日北朝鮮のミサイル発射失敗は新体制にとっては大きな躓きではあったが、これによって新体制が崩壊するわけでも核兵器開発をあきらめたわけでもない。現時点で我々が再確認すべき諸点は次のように要約されよう。(1)北朝鮮の究極的目標は北による南北統一である。その試みはアメリカの介入により蹉跌したが、これは金日成の遺訓である。(2)「北」は朝鮮戦争のトラウマから脱することができず(国連軍米マッカーサー指揮官は最終的には解任されたとはいえ核兵器の使用を進言していた)、小国「北」が超大国米に対抗する手段は核兵器による抑止力しかないと信じている。(3)そのためには長距離ミサイルの開発とそれに装着する核弾頭の開発を最優先で推進するしかなく、国民の生活レベルが低迷することもやむを得ない。(4)「北」の国民はナショナリズムを鼓舞され国威の高揚を掲げられれば反対を叫ぶわけにはいかない。
説明を加えれば、浪費文明にどっぷりと浸かっている我々の眼で「北」の生活を見てはならないということである。「北」の食糧不足はアフリカの最貧困民の栄養不足に比べれば国家が崩壊するほどのことではない。日本の明治維新から先の敗戦までの富国強兵、臥薪嘗胆、「欲しがりません、勝つまでは」などの諸政策を顧みれば、「北」の一般国民はまだまだ窮乏生活に耐えられるであろう。消費文明大国であるアメリカの眼と鼻の先にあるキューバがカストロ独裁下で独自の経済体制を作り長期間耐えてきたこと、東西ドイツが統一した際に東ドイツが空留守にならなかったことから見られるように、大部分の人間は自分の生まれ育ったところを簡単に捨てることはできないのだ。
「北」の行動パターンを復習すれば、1993年核拡散防止条約からの脱退、1998年長距離弾道ミサイル試射、2005年核保有宣言、2006年7月弾道ミサイル連続発射、2006年10月第1回核実験、2009年4月長距離弾道ミサイル発射、2009年5月第2回核実験、2012年4月長距離弾道ミサイル発射、という具合であり、その過程で食糧援助等を何回か獲得している。従って、「北」の新政権はミサイル発射の失敗に懲りるどころか、4月15日の軍事パレードで誇示した(張りぼて?)ワシントンやニューヨークにも届く大型ミサイルの核兵器化を更に推進するであろう。米による約束されていた食糧援助の中止は却って核実験を再開するまたとない口実となろう。
以上に鑑みれば、「北」の核兵器開発を止めさせる唯一の方法は、「北」を核兵器の悪夢から解放することではないだろうか。ロイターは18日中国外務省が朝鮮半島の非核化を呼びかけたと報じている。これが1992年の南北による「朝鮮半島非核化宣言」(双方は、核兵器の試験・製造・生産・受入れ・保有・貯蔵・配備・使用しない、核エネルギーは平和目的のみに利用する等)といかなる関連があるのか見極める必要はあろうが、日本としても前向きに検討する価値は十分にあろう。
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