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2012-04-24 00:00
複眼的思考が求められる公共事業費の見直し
船田 元
元経済企画庁長官
先の衆議院総選挙での民主党のマニフェストで、「子ども手当て」などとともに目玉だったのは、「コンクリートから人へ」というスローガンである。たしかにこれまでの公共事業は、「農道空港」とか「スーパー堤防」など、無駄と指摘されたものが少なくなかった。また必要以上に肥大化した公共事業が、一部の利権を拡大したという指摘もある。かつての自民党政権のもとで発生した現象であり、大いに反省しなければならない。政府・民主党はこのスローガンが国民の支持を得られたと考え、政権獲得後の2010年度公共事業費を前年比18%減、11年度には同14%減、12年度には同5%減と、大幅な削減を続けてきた。
ところがこうした中、昨年3月11日に東日本大震災が発生、未曾有の人的・物的損害を被った。防災施設や公的インフラも大規模に破壊され、守るべき人の命が守れなかった。阪神淡路大震災の直後も、公的インフラの耐震性がクローズアップされ、実際、首都高速道路でも急ピッチで耐震補強工事が行われた。今回の大震災はさらに度を増して、その耐震性が真剣に問われている。
特に首都高速道路は、東京オリンピックの直前に建設された部分では、そろそろ築後50年が経過しようとしている。部分的に修繕を続けているが、耐震性を高めるためには、より大規模な改修工事や、場合によっては新しく建て替える必要も出てくるだろう。東京直下型地震の発生も予想されるが、それが来ても大丈夫という公団の説明は、説得力に欠ける。このまま公共事業予算が横ばいを続けると、20年後には予算の全てがメンテナンスに費やされ、新規事業ができなくなる恐れがあると、国土交通省は説明する。さらにこれ以上予算を削減すれば、メンテナンスが必要なのに放置されるインフラが出てくると指摘する。
メンテナンスにどのくらいの費用を使うかは、基準の設定で変化する余地があり、役所の計算と説明をそのまま受け止めることは難しい。しかし定性的に考えれば、それに近い現象が将来発生することは、想像に難くない。このような厳しい現実を直視した場合、我々は「コンクリートから人へ」という単純で幼稚な構図ではなく、「コンクリートも人も」という複眼的思考や、「人を守るコンクリート」をどう維持していくかという新たな発想が必要になってくるはずだ。
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