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2012-04-29 00:00
(連載)「革新的エネルギー・環境戦略」はバランスを重視せよ(1)
角田 勝彦
団体役員
エネルギーの安定供給は、産業と生活に不可欠の要因である。しかるにエネルギー資源(とくに原油)を巡る国際情勢は安定しているとはいえず、確保には政治面を含め格段の努力が必要である。地球温暖化など環境対策を含め自給率向上のため原子力発電が推進されてきた所以であるが、2011年3月の福島第一原発事故はエネルギー・環境戦略の抜本的見直しを要求している。世界はそうでもないが、我が国では、脱原発はともかくとして脱原発依存が大勢となった。筆者は「原発再稼働は慎重に(4月2/3日付本欄投稿)」で表明した通り、地震国日本での原発安全対策には政治家でなく専門家の判断を優先すべきと考えるが「(客観的)安全」と判断された場合に「(主観的)安心」を求めすぎることは、政治として妥当性を欠く。
国民に安心を与えるための説明は強化すべきであるが、政府がこの夏まとめるとされる「革新的エネルギー・環境戦略」はバランス重視を主眼とすべきである。簡単に従来経緯を振り返ってみる。戦後の日本(及び世界)の人口急増を包含しての経済成長は、安価で安定したエネルギー資源として石油が供給されたことが一つの大きな原因だった。とくに1960年代に入って石炭から石油への転換が進み、1967年には石炭をしのいで一次エネルギー源の第1位を石油が占めるようになった。73年には、世界の一次エネルギー消費に占める石油のシェアは47%強、西側先進国では53%強、日本では77%強となっていた。しかし、1970年代後半以降、供給面(1973年第一次石油ショック)及び環境面(1972年国連人間環境会議。公害列島日本。その後の地球温暖化を含む)で問題が生じた。
1972年ローマクラブ報告書「成長の限界」は、将来も現在(1972年)のような人口の爆発的増加と経済成長が続いた場合には、100年以内に地球の成長は限界に達すると警告した。経済成長とエネルギー(とくに石油)と環境はトリレンマの関係にあると認識される。2度の石油危機は原油価格の合計10倍にも達する上昇をもたらしたが、それより供給の量的削減は生産(石油漬け農業を含む)の減少や生活水準の低下を生じさせる虞で、石油パニックというべき事態を発生させた。日本ではトイレットペーパーや洗剤等の買占め騒動もあった。エネルギーの安全保障が第一目標になり、石油依存度の低減、原油の輸入先の分散化(脱中東)、海外での自主開発油田の獲得、及び石油備蓄の拡充などが図られた。この関連で世界のエネルギー需要、資源の埋蔵量と可採年数も注目を集めた(原油価格の高騰もあり2010年の世界の原油可採年数は55.8年に達している。これにはオイルサンドなどが含まれている)。
この面で、例えば P.C.パトナムは、人口増を勘案した2050年までのエネルギー需給に関し、これまで人類が主として依存してきた炭化水素資源(石炭、石油、天然ガス)は供給力の限界に到達し、自然界で年々発生しているエネルギー(太陽熱、水力、風力ほか)を利用してもなお不足するだろうとみて、結論的に原子力発電の開発が必要であるとした。つとに1953年、アメリカのアイゼンハワー大統領は、アトムズ・フォア・ピース(平和のための原子力)計画を発表している。石油依存度の低減では、主に原子力と天然ガスの導入により一定の成果が上がった。(つづく)
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