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2012-05-18 00:00
(連載)フランス・ギリシャの選挙結果が物語るもの(2)
藤井 厳喜
ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ・オブ・ジャパン代表取締役
これに対して、オランド新大統領は、欧州中央銀行に対し、成長支援策をとる事を要求しています。また、欧州安定化メカニズム(ESM)に銀行免許を与えるか、ESMが直接各国政府へ融資できるような改革を求めています。更に、EU財政協定を改定し、ユーロ共同債の発行を実現して、成長促進策を採用するように主張しています。こういった点で、現在のドイツ・メルケル政権と、オランド仏新政権との亀裂は明らかです。ドイツ側は盛んに表面上は宥和と話し合いのポーズをとっていますが、この亀裂を軟着陸させる事は、非常に難しいでしょう。6月10日と17日には、フランスの国会選挙が行われます。おそらくこの選挙で、オランド支持勢力が勝利するでしょうから、フランスでは大統領と議会が一致して、財政規律原理主義に反対する事になるでしょう。
最も、ドイツ国内を見渡すと、最近の地方選挙(シュレスウィッヒ・ホルシュタイン州議会選挙)で、メルケル首相の与党・キリスト教民主同盟(CDU)は大敗しています。ドイツ国内にも、メルケル政権の財政規律一辺倒への反対の声は結構、拡がっているのです。2013年には、ドイツで総選挙が行われますが、ここで現在、野党の社会民主党(SPD)が勝てば、独仏関係は、協調する可能性も高くなるでしょう。ドイツ左派の社会民主党は、フランス社会党のオランド新大統領と類似した政策傾向をもっています。オランド新大統領は、EUの中で、必ずしも孤立しているわけではありません。
ヨーロッパ中央銀行(ECM)のマリオ・ドラギ総裁や、欧州委員会のオリ・レーン委員は、オランド氏の成長戦略を支持しています。ちなみに、5月3日にはイギリスで統一地方選挙があり、与党保守党が大敗し、野党労働党が大勝しました。この背後にも、現在の経済の閉塞状態に対するイギリス国民の不満の声が存在しています。ギリシャの総選挙では、緊縮政策を推進していた連立与党の2つの政党が149議席しか獲得できませんでした。前議席数が300議席数なので、過半数に2議席だけ足りない結果となりました。第1党中心の連立が不可能になり、第2党中心の連立が模索されましたが、これも出来ませんでした。
今回の選挙では、「黄金の夜明け(Golden Dawn)」というナチスまがいの極右政党が21議席も獲得しています。ギリシャ政局も、波乱含みです。私は、2013年には、ギリシャはユーロを離脱すると予測しています。ポルトガルも、ユーロ離脱の可能性が高いと考えますが、この両国が、ユーロ圏を離脱すれば、一時的にしろ、かなりのショックがヨーロッパ経済を襲い、ユーロは更に、弱体化した通貨となるでしょう。日本銀行と、現民主党政権が的確な政策を取っていない為に、当面、円独歩高は、避けることが出来ず、日本経済は更に大きな苦境に陥ることになるのではないかと心配しています。(おわり)
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