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2012-05-24 00:00
(連載)思った以上に深い、鳩山外交が日米同盟に残した傷(2)
河村 洋
外交評論家
アメリカン・エンタープライズ研究所のマッケンジー・イーグレン常任フェローは、アジア回帰戦略に批判的な分析を行なっている。オバマ政権の計画では米軍の大幅な人員削減が行なわれ、陸軍と海兵隊で合わせて10万人にもおよぶ兵員が解雇される。それはイラクとアフガニスタンでの長きにわたる戦争による「オーバー・ストレッチ」の是正を上回る規模である。さらに装備の調達と研究も全軍で削減される。海軍と空軍は大きな打撃を受けている。両軍の規模もさることながら、研究開発費の削減の方がより深刻である。中国に対するアメリカの優位を維持するためにも接近阻止・領域拒否能力への対抗手段への投資が重要だが、オバマ政権はこれも削減している。
イーグレン氏はさらに「オバマ政権の国防政策の最大の犠牲者は空軍だ。空軍が来年に購入する航空機の総数は、陸軍と海軍よりも少ない。さらに問題なのはステルス戦闘機・爆撃機や無人機といった最先端技術の支出が削減されていることである」と主張する。オバマ政権の「アジア回帰」によってアメリカが中国に対して戦略的に脆弱になるのは全く矛盾しており、イランやテロリストといった中東の脅威に対しては言わずもがなである。オバマ氏はアメリカ軍のハードウェアよりもソフトウェアの向上に力を入れているが、ロバート・ゲーツ前国防長官の退任演説を思い起こすべきである。国家安全保障の目的を達成するには軍備の規模が充分でなければならない。この議論に当たり、2010年の「英国戦略防衛見直し」に言及したい。キャメロン政権は厳しい財政事情の中でイギリスの国防を再編するに当たり、「ハードウェアよりもソフトウェアを重視する」と述べたが、その結果はどうだろうか。
リビア紛争でのイギリスの戦闘ぶりは充分に良いとは言えなかった。フォークランド戦争30周年を迎える今年は、アルゼンチンでナショナリズムが高揚し、兵力規模を縮小されたイギリス軍がこれに自信を持って対処できるかと言えば心もとない。オバマ政権は「皮肉な特別関係」を示すかのように、イギリスの現政権と同様の過ちを犯している。上記の観点から、オバマ戦略の矛盾をさらに議論してゆきたい。イーグレン氏は空軍協会のダグラス・バーキー政府関係部長とともに、本年3月の“AEI National Security Outlook”でオバマ戦略の根本的な弱点について議論している。重要な点は「同盟国がアメリカとその国益に寄与するかどうかは、アメリカがプレゼンスを誇示し、超大国の地位にとどまり、問題を解決する意志を示していると認識するかどうかに直接かかっている」ということである。
空軍力の大幅な削減はアメリカのプレゼンスをかなり低下させてしまう。両氏は2010年に発行された『4年ごとの国防計画』を引用し、「アメリカは中国の脅威の増大に対処するためにも長距離攻撃システムとそれに伴うセンサーへの投資を増やすべきである。また米軍がハッカー攻撃にさらされた環境でも作戦行動を遂行できる能力を開発し、誇示しなければならない」と主張する。戦略爆撃機とA2/AD対抗能力は、エア・シー・バトルの戦闘力を質、量とも高めるうえで重要である。(つづく)
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