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2012-05-25 00:00
戦略的意義強まる太平洋・島サミット
鍋嶋 敬三
評論家
日本が主導してきた第6回太平洋・島サミットが「太平洋のキズナ」をキャッチフレーズに5月25日と26日沖縄県名護市で開かれる。中国の海洋進出、これに対応する米国のアジア太平洋回帰の中で日本の要請を受けて米国が初めて参加、会議の戦略的意義が強まった。自然災害への対応、環境・気候変動とともに海洋問題も議題の一つに設定されている。オーストラリア、ニュージーランド以外は小さな島国14カ国の集まりだが、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国より数の上では多い。日本外交にとっては大事にしなければならない重要な地域である。
日本はクック諸島と共同議長を務める。他の島嶼国はミクロネシア連邦、フィジー、キリバス、マーシャル諸島、ナウル、ニウエ、パラオ、パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島、トンガ、ツバル、バヌアツである。日本にもゆかりの深い国が多い。第1次世界大戦後、日本が国際連盟の信託統治の委任を受けた地域であり、日本からの移住者も多く年配者には思い出深い地名もある。日本軍の死者2万人を数えた太平洋戦争有数の激戦地・ソロモン諸島のガダルカナル島や、米国の水爆実験で第5福竜丸が被爆(マーシャル諸島のビキニ環礁)した事件など、日本とは縁が深い。
信託統治時代、南洋群島全体を統括する南洋庁が置かれたパラオのトリビオン大統領は5月22日、野田佳彦首相との会談で「日本の『同盟国』と思って下さい」と語り、親日家ぶりを発揮した。パラオは国防、安全保障の権限を米国に委ねており、1999年台湾と国交を結び、米国、日本、台湾との関係を重視している(外務省資料)。ミクロネシア連邦も国防・安保を米国に依存、パラオとともにイラク戦争に参加した。ソロモン諸島も台湾と外交関係を持つ国の一つ。これをにらんで中国が経済援助をてこに影響力拡大を図っている地域である。国土の面積、人口など規模の小さな国が多いだけに、経済的に日本や米国、オーストラリアなどによる継続的な支援が不可欠だ。
日本に必要とされるのは、経済的自立に向けてかゆいところに手の届く支援であり、政府開発援助(ODA)による生活基盤となるインフラ整備、電力供給、教育、病院の改修など生活に密着した援助(無償資金協力、技術協力)である。日本は3年前の第5回サミットで再生エネルギーの普及に向けて太平洋環境共同体基金の設立を表明、68億円を拠出してすべての太平洋島嶼国で太陽光発電と海水淡水化の事業を進めている。国民の生活を向上させる地道な援助は金額は巨額でなくても日本とのきずなを強めるのに大きな役割を果たすだろう。太平洋・島サミットは1997年橋本龍太郎内閣で始まった。15年後の今日、アジア太平洋の地政学が米中のしのぎ合いで変容を遂げる中、サミットの戦略的意義は当時の想定を大きく超えるものになった。
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