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2012-06-04 00:00
(連載)アラブの春への協力(1)
角田 勝彦
団体役員
2011年1月チュニジアに始まり、エジプト、リビア、イエメン、そしてシリアへ拡大した「アラブの春」を中心として、この6月に中東(とくにイラン)・アラブ情勢は新しい展開を見せよう。国連シリア停戦監視団(UNSMIS)の派遣が急がれており、6月中旬にはエジプトの大統領選決選投票及びイランと関係6カ国のモスクワ協議が行われる。同地域がエネルギー安全保障面などで重要な意味を持つ我が国は、欧米諸国との協調路線を維持しつつ、その安定に協力していかねばならない。4月鳩山元首相のイラン訪問は軽率に過ぎたが、関係各国すべてと友好関係を維持している我が国がその安定に貢献し得る可能性は一般に考えられるより大きいのである。
チュニジアを23年間支配したベンアリ政権は、田舎町での若者の焼身自殺をきっかけに全土に広がった退陣要求デモに屈して2011年1月14日崩壊した(サウジアラビアに亡命)。民衆デモはエジプトにも飛び火し、2月にムバラク政権が倒れた(2012年6月2日終身刑判決)。長期独裁体制に対する民主化要求の動きは、リビア(2011年10月カダフィ殺害)やイエメン(2011年11月サレハ大統領権限委譲)、シリア(2011年3月以来アサド政権と反体制派の武力衝突)などアラブ諸国に広がった。
サウジでも2011年3月11日をサウジの「怒りの日」とし選挙による指導者の選出、女性の自由拡大、政治犯釈放などを要求するフェイスブック上の呼びかけがデモを生んで、9月アブドラ国王は男性だけを任命していた国政の助言機関・諮問評議会に女性を登用し、地方選挙での投票と立候補も認めると発表した。他方、濃縮ウランの製造を続けるイラン(IAEAによれば軍事転用できる20%濃縮ウランを110キロ製造済み)と中止を求める欧米諸国との協議は成果が上がらず、制裁の強化による悪影響のほか問題先送りにいらだつイスラエルの軍事攻撃の可能性の高まりも懸念される。
ちなみにイランは、最大の同盟国シリアのアサド政権が揺らぎかねない状況に鑑み、反米イスラエル路線で協調できる新たな「足場」をイスラエルの隣国エジプト(イランは80年に国交を断絶)に求めて、外務省幹部を繰り返し派遣するなどしている。イスラエルも、エジプトが反イスラエルに転じることへの警戒感をあらわにしている。エジプト軍が抑え込んできたシナイ半島のイスラム原理主義の武装勢力がパレスチナの武装勢力と連携し、対イスラエル武装活動を活発化させる可能性も指摘されている。(つづく)
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