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2012-06-13 00:00
求められる大学とハローワークの連携
船田 元
元経済企画庁長官
3年前のリーマンショック以後、わが国の就職事情は厳しい状態が続いている。大卒者の内定率は今年度末で約85%、高卒者のそれは約95%となっている。決して悪い数字ではないが、実は少しからくりがある。大卒者の中には最初から正規の就職を希望しない、いわゆる「フリーター」が少なくとも3割にも上っており、これを分母に入れた時の内定率は5割を少し超えた程度になる。さらに就職率が低い大学の一部では、「就職を希望しない」学生を意図的に作り、表向きの内定率を操作するところもあると聞く。このような厳しい就職戦線に危機感を覚えた厚生労働省は、先日新たな新卒者の雇用対策を発表した。それは、国内の全ての高校と大学に、ハローワークから就職相談員を派遣、あるいは割り当てるというものだ。これまでの受身の雇用促進対策から、大きく舵を切るものと評価されている。
しかしながらこの相談員の役割が、従来のような就職情報の提供や相談、就職マッチングに限定されるかぎり、効果はあまり望めないだろう。なぜなら新卒者の就職困難の原因は、情報の不足やミスマッチといった表面的なものではないからだ。大卒者の多くは安定した職場を求めて、公務員や大企業に就職する希望を簡単には捨てない。親の立場からすればなおさらである。もし彼らの多くが、中堅企業や堅実な中小企業への就職を希望してくれれば、就職内定率は飛躍的に改善することは明らかだ。ハローワークの職員が本当に役立つためには、大学生の多くに「翻意を促す」だけの働きをしてもらわなければならない。
全国の大学の多くは、卒業生の就職率を出来る限りよくするため、早くも2年生の後半から就職ガイダンスやキャリア教育のプログラムを、授業の中に組み込んでいる。しかしながらこれらは、大学教員がよかれと思って作ったものが多く、内容的には現実と乖離した「頭でっかち」なプログラムになってしまう。ここに就職のプロであるハローワークが入り込んで、実践的なカリキュラム開発に協働することができれば、効果は飛躍的に高まるのではないだろうか。
厚生労働省は、「ハローワーク職員を大学に派遣したらそれで終わり」というようなお役所仕事をやめ、大学の教職員と一体となって智慧を絞る努力をすべきである。また大学側も「最高学府」という驕りを捨て、外部のプロを効果的に利用することが求められる。新しい制度を生かせるかどうかは、ハローワーク・大学双方の意識改革に懸かっているといっても過言ではない。
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