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2012-06-17 00:00
公立小・中学校の教育課程の編成・実施について
金子 弘
日本学習社会学会会員
初等中等教育は授業時数を中心として教育課程が編成されているが、教育課程の編成・実施の基本的な考え方は、教育課程の基準に従い、その水準の維持を前提に、授業時数の運用および各教科等の指導内容の質とともに、指導に必要な時間を確保しなければならないというものである。以下では、公立小・中学校における教育課程の編成・実施に係る行政運営が現実にはどうなっているのかを明らかにする。
文部科学省初等中等教育局教育課程課教育課程企画室「平成23年度公立小・中学校における教育課程の編成・実施状況調査(A票)の結果について」によると、教育課程の2010年度実績では、学校教育法施行規則に定める標準授業時数を下回っているのは小学校の第2学年で0.1%、第3学年で0.1%、第4学年で0.2%、第5学年で0.3%、第6学年で0.5%、中学校の第1学年で1.0%、第2学年で0.9%、第3学年で4.4%とごくわずかとなっている。しかしながら、第165回国会衆議院教育基本法に関する特別委員会議録第10号(2006年11月10日)によると、当時の文部科学省初等中等教育局長は、年度初めに「標準授業時数を下回る教育課程の計画をつくることは考えにくい」と述べている。標準授業時数は最低基準であるという指摘から、災害などのような特別な事情がある場合を除き、標準授業時数を下回らないようにすべきだろう。
他方、同調査によると、教育課程の2011年度計画では、「授業の1単位時間の弾力的な運用により授業時数を増やす」としているのは、小学校で3.9%、中学校で3.2%に留まっている。より積極的に授業の1単位時間の弾力的な運用を行い授業時数を確保するようにすべきだろう。また、個に応じた指導を実施するとしている小学校は91.0%、中学校は92.6%に上っているものの、「個に応じた指導として理解や習熟の程度に応じた指導を実施する」としている小学校は78.0%、中学校は68.5%となっており、理解や習熟度に応じたきめ細かな指導を一層積極的に行うことで、指導内容の質の向上を図るべきである。さらに、「課題別、興味・関心別の指導を実施する」としている小学校は24.2%、中学校は16.4%に留まっており、科学技術・学術審議会学術分科会「研究の多様性を支える学術政策-大学等における学術研究推進戦略の構築と国による支援の在り方について-(報告)」(2005年10月13日)による「自然・社会現象への興味関心が広がる初等中等教育段階から、学術研究の芽を育てるような機会を提供していくことが重要である」との指摘を踏まえた教育を行うべきである。
また、文部科学省初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付企画・学校評価係「学校評価等実施状況調査結果について(2008年度)」によると、公立学校(幼稚園、小・中・高等学校等)で学校における情報提供の内容として授業時数(計画時数や実施時数)をあげているのは33.1%、シラバスをあげているのは19.2%に留まっており、指導内容や授業時数に関する情報を保護者等へ積極的に公表すべきであるといえる。こうしたことから、地方教育行政は自らが行った教育課程の編成・実施について説明責任を果たすとともに、その成果や課題を継続的に検証し改善を図っていかなければならないといえる。そのためには、地方教育行政の教育行政官は初等中等教育に関する教育政策や教育法規を体系的に修得し、教育法規を手段として高度な教育政策を実現できるよう、教育政策法務能力を高めるべきである。そして、初等中等教育段階から学術研究の芽を育てていかなければならなくなっていることから、学術政策との関連についても修得する必要がある。
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