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2012-07-10 00:00
日本は「武器貿易条約」交渉で中心的役割を果たせ
水口 章
敬愛大学国際学部教授
7月2日、イラン革命防衛隊はセムナン州の砂漠地帯でミサイル攻撃の軍事演習を行った。また、イランのメヘル通信は、イランの国会議員が対イラン経済制裁に関与する国に向かう原油タンカーのホルムズ海峡通過を阻止する行動をとることができる法案の立案を検討していると報じている。こうしたイランの行動は、7月1日から、EUによるイラン産原油の全面禁輸措置の発行に対抗してのものと考えられる。この動きを受けて、下落していた原油価格は1バーレル当たり3ドル近く上昇した。
このようなイランの行動を分析している中で、国際関係が「アナーキー」(無秩序)な状況になっていると今更ながら認識させられる。冷戦終焉後も「世界政府」をつくることができないでいる中、特に2008年のリーマンショック以降、国際法や国連決議さえ無視して行動する国が目立ち始め、国際社会はさらに混沌とした状態となっている。このアナーキーな状態において、国家が対外政策を立案する際、リアリズム(realism)とリベラリズム(liberalism)の立場の違いという壁にぶつかる。
リベラリズムの立場に立つ者は、国際的な相互依存が高まる中で国際協調は可能であるとの認識を持っている。しかし、イランは、米国とイスラエルが同国とシリアの軍事同盟にチャレンジしていると見ており、シリアのアサド政権を打倒した後には自国への経済的、軍事的圧力を一層強めるとの現実的分析をしている。このため、イランは「対話」や「国際協調」といった言葉に隠されている意図を読み取ろうとやっきになっており、「力」を重視する政策立案を取ろうとしている。ロシアや中国は、そうしたイランにすかさず武器取引を持ちかける。一方、こうしたイランの軍拡に対抗すべく、アラブ湾岸産油国も防衛力強化に動き、米英仏との武器取引を活発化させ、さらには中国などからの武器購入も模索するようになる。
安保理常任理事国が主導する形で、国際社会のアナーキー状態が深刻化していく。国連で始まった「武器貿易条約」の交渉は、このような状況を生んでいる武器輸出入に関して、国際法上の規制をかけようとする試みである。日本はこの条約について、憲法の前文の国際平和を希求する理念を実現するとの目的で、中心的な役割を果たしてほしい。それは、リベラルな憲法を掲げながら、国連のもとでつくる決議や規則を重ねて制度を構築するというリアルな行動をとるという難しい課題ではある。しかし、こうした外交活動を行うことが真の「クール・ジャパン」ではないだろうか。
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