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2006-10-20 00:00
宥和政策を繰りかえすな
長南政義
研究員
北朝鮮の「瀬戸際政策」を成立させているものはなんであろうかと考えた場合、外交交渉がある程度効果を発揮し、支援を与えれば、譲歩を引き出せると考えてきた国際社会の錯誤にあるのではなかろうか。外交交渉は、ある程度の相互信頼と価値観の共有が前提となるが、北朝鮮と交渉国の間にはこうした前提が存在しないように思える。
交渉に際し、北朝鮮は、通常の国家とは相違し、「独裁国家」であることを留意する必要があるように筆者には思える(特に北朝鮮の場合独裁国家といっても中国のような「一党」独裁国家ではなく、「個人」独裁国家であることに留意すべきだ)。国家の行動は「国益」の設定にその源があるが、「独裁国家」北朝鮮にとっての国益は「金王朝の存続」である。金一族による国家支配を「国益」に設定する北朝鮮と交渉に当たる周辺諸国が価値観を共有できないのは当然である。また「国益」をこう設定する北朝鮮にとって、イラクの主権を無視し、イラクへ侵攻しフセイン体制を打倒した米国は「金王朝の存続」を図る北朝鮮にとって不信の対象でしかないであろう(実際に米国は1994年の危機に際し、北朝鮮侵攻を真剣に検討した経緯も留意すべきであろう)。こう考える北朝鮮が、自国の「国益」を維持する手段として核を開発し、核抑止力による体制の維持を願うのは、北朝鮮にとっては合理的な選択であろう。
そもそも、過去の歴史を振り返ってみても、北朝鮮も含め「独裁国家」は、独裁者個人の生存のためならば、どのような手段にでも訴える傾向があることを留意する必要がある。つまり、その独裁者による支配を何らかの方法で終焉させない限り、周辺地域の安定は達成されえないのである。ヒトラーに譲歩した結果はどうであったろうか?第二次大戦の戦略上やむを得なかったとしても、スターリン体制に軍事物資を支援してきた米英の戦略は、大戦後に冷戦を生み出した一因となったのではなかろうか?もちろん外交交渉による問題の解決が望ましいのは確かであろうが、1994年以降の北朝鮮との交渉で国際社会が繰り返してきたような「支援を与え、譲歩を得る」形式の解決は、「問題の先延ばし」以外の何物でもないことをもっと強く認識する必要があるのではなかろうか。
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