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2012-08-11 00:00
平林元大使の投稿に共感する
岡部 加寿子
会社員
7月28日より30日付けの本欄に3回にわたって連載投稿された平林博元大使の論考「丹羽中国大使の早期引退を勧める」が、内外で大きな反響を呼んでいる。日本外交の中枢を歩いてこられた平林元大使があえて本名を明らかにして、丹羽大使に諫言したのが、このような反響や共感に繋がっていると思う。現に、最初にスクープした8月3日付けの『毎日新聞』は「内閣官房外政審議室長やインド大使を歴任した元外交官が現役大使に名指しで引退を勧めるのは異例」」と述べている。とかく当たり障りのない保身を常とする日本官僚のなかでは、確かに平林元大使は気骨のある人物のようである。このような平林元大使の態度のフェアさを評価したればこそ、『産経新聞』『日経新聞』『Japan Times』などの各紙も平林発言をフォローしたはずであり、さらに、中国、香港、シンガポールなどの60紙以上もが記事として取り上げたと思われる。
日本にとって中国は文化的にも経済的にも重要な国である一方で、隣国としての長い交流の歴史ゆえに、その摩擦や懸念材料も多い。とくに感情的になりがちな問題としては、歴史認識問題、領土問題、台湾問題の3つがあると考えられるが、とりわけ近年領土問題への関心が日中どちらにおいても高くなっている。2005年から日中共同で実施している世論調査の最新結果(2012年)によれば、日本が中国に「良くない印象」を持つ理由として、「尖閣諸島を巡り対立が続いているから」との回答は48.4%と全回答者の半数近くを占めている。他方、中国では日本に「良くない印象」を持つ理由のうち、「日本政府が尖閣諸島で強硬な態度をとっているから」との回答は39.8%と、こちらも全回答者の4割近くを占めている。
このように世論レベルでも日中が一歩もひかず、ともすれば感情的にエスカレートしやすい、かつ国益に直結する問題において、駐中国大使という日本を代表して中国にもの申す立場である丹羽氏が、日本の外交方針と異なる発言を、中国のみならず世界に発信するというのは、まさに平林氏が指摘するように「思慮に欠ける行為」であった。もう一点、丹羽氏の大使としての発言で、驚くべき、かつ許されがたいのは、5月4日の横路衆議院議長と習近平国家副主席との会談で、日本国内で石原都知事の尖閣購入構想に賛成する者が多数を占めることについて、「日本の国民感情はおかしい」「日本は変わった国なんですよ」と述べたことである。政府の意を受け、国益を守り、国民を代表する立場にあるはずの大使が、政府や国益や国民を揶揄するような発言は、驚天動地というしかない。確かに「友好」は大事だが、日本の国益を守り、言うべきことをしっかり言うことが前提ではないか。平林氏は「大使たる者、現在の中国に対しては、日本の国益をしっかりと主張し、これを守る気概を必要とする。その上での友好関係である。逆ではない」と述べているが、「よくぞいってくれた」と私は言いたい。
最後に一言したいのは、こういう重要な時にあたって、外務省の現役はともかく、OBたちが、何も言わずに沈黙を守っているのはなぜであるか、ということである。あえて「火中の栗を拾わず」ということであろうが、定年まで税金で生活し、いままた年金に守られている身で、これ以上なにを守ろうというのであろうか。せめて平林氏の十分の一の勇気をもって、大使としてあるべき姿はどのようなものなのか、自分ならどうするのか、丹羽氏のような大使であってよいのかを、国民に向かって語る義務があるのではないのか。せめてその程度のことを語る「勇気」だけは失ってほしくないものだ。
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