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2012-08-17 00:00
世界で目立つ「日本軽視」の言動
角田 勝彦
団体役員
最近、世界で「日本軽視」の言動が目立っている。とくに領土関係で顕著であるが、米国ロムニー氏の「日本は1世紀にわたる衰退の国」との発言もある。その背景には世界の政治経済における中国を含む新興国の台頭(すなわち日本を含む先進国の地位の相対的低下)があるが、歴代民主党政権の外交上の失策による威信低下の影響も大きい。失策の主因は、情緒的思い込みと二元外交につながる個人的パフォーマンスにある。野田首相は政治生命をかけた消費税引き上げを実現し、秋には定数是正がなんとか結論を見て、総選挙が予想されている。そこでは大衆迎合的な新党(複数)躍進の可能性も見込まれる。外交面で「外交ごっこ」を繰り返す危険を避けるためにも、既成政党が今から現実主義に立った政策協調を追求することが望まれる。
ロシアのメドベージェフ首相が7月3日北方領土の国後島を視察したと思ったら、韓国の李明博大統領は8月10日竹島を訪問し、16日には香港の活動家らが尖閣諸島に上陸した。中国『人民日報』系の『環球時報』が11日掲載した「中国は、領土問題でロシアと韓国の立場を支持し、共同で日本に対処すべきだ」とする社説が実施に移されていくかに見える。なお、同紙は、尖閣問題で「米国の中立(的立場)を勝ち取るべきだ」と強調している。経済面では、米大統領選の共和党候補となるロムニー前マサチューセッツ州知事が、8月9日の演説で、米国は日本と違い「十年あるいは百年にわたって衰退と困窮に苦しむ国にはならない」と述べた。オリンピックについてすら、フランスのメディアは、最近、「中国は自国が真のオリンピック大国であることを証明し、北朝鮮、韓国も存在感を見せたが、2020年オリンピックの候補地の日本は、金メダル15個を目標としていたのに、7個という結果に終わり、アジアの国で最も失敗した国となった」と報じた。なお14日李明博大統領は、天皇陛下ご訪韓の条件として「亡くなった独立運動家に対して心から謝罪する」ことを挙げ、日本政府の抗議を招いている。
冷戦終焉後の世界秩序に関しては、「米国への単極化」を始めとして様々な見方が提示されてきた。とくに9・11テロ以後は激しい。しかし、筆者は、現在は新しい秩序が形成されている最中であり、結論を出すのは時期尚早と考えている。目下EUの危機が注目されているが、台頭する中国にしても、高度成長の限界の問題のほか、一党独裁がどこまで国民に容認されるか、という基本的問題がある。中国政府は反政府運動に変化するのを恐れて、反日運動を規制しているとの指摘もよく聞かれるところである。本欄でも何回か論じたが、筆者は1960年代から世界で数百年に一度の大変容(ニュールネサンス)が生じており、冷戦終焉以降は後期に入っていると認識している。基本は、近・現代の基礎となったウェストファリア体制の変更(国家主権の不平等化と内政干渉容認へ)および資本主義体制の変化(知本主義へ)であり、アフガン・イラク戦争・アラブの春など(いわば新しい三十年戦争)のあと、遠くない将来に超現代(メタモダン)がやってくるとの考えを持っている。メタモダンの構図としては、これまでの人類の経験外の悪い未来(核戦争による人類の事実上の絶滅など)と良い未来(超科学技術によるエデンの園など)は別にして、権力構造から見れば、単極、多極、無極、分極が考えられる。
メタモダンにおいて日本がどのような位置にあるかは予言できない。しかし、円高ひとつみても、ロムニー氏の言った「日本軽視」論は誤りだと言えよう。エネルギー政策などで自ら墓穴を掘る愚に陥らない限り、日本がルネサンス期のフィレンツェのようになることも期待できる。ただし、外交面では、政府の各時点での決断が思わぬ結果を生む可能性が高い。思い付き外交は危険である。責任ある既成政党が、今から現実主義に基づく政策協調を追求することを望む次第である。20日よりの週に採択される予定の初めての竹島・尖閣関係国会決議に期待する。
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