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2012-08-23 00:00
日韓関係の現状を憂慮する
吉田 重信
日中関係研究所主宰
最近の日韓関係は相互非難の応酬が続き、ますます収拾困難な悪循環に陥っている。日本にとって最も近い国、韓国との関係の悪化は、日本外交全般にわたり大きな負担になりつつある。しかも、日韓関係は普通の二国間関係ではなく、かつての宗主国と植民地とのそれに近い。もし、今でも英国とかつての植民地であったインドとの間に深刻な紛争が継続しているならば、さぞ第三国は英国外交の失敗の証拠と考えるに違いない。日韓両国の同盟国である米国は、兄弟喧嘩や家庭内のもめ事のような日韓関係の現状を見て、はらはらはと心配し、他方、中国やロシアは内心ではほくそ笑んでいるだろう。
このように、お互いに不毛な応酬を繰り返している日韓両国政府は、感情に流されずに、大局的・長期的見地から関係修復に専念するほかない。そのためには相互非難の悪循環を止め、まずなによりも事態の鎮静化をはかるべきだ。現在両国政府が行っている経済・政治・人的交流の縮小、国際司法裁判所への提訴と拒否などの小手先の報復措置を繰り返すよりも、もっと抜本的な関係修復策を目指して、まず両国首脳同士が直接対話して、関係修復の糸口をみつけるのがよい。
関係悪化の根本原因となっているのは、竹島問題よりも、いわゆる従軍慰安婦問題だが、この問題については、過去の経緯にとらわれずに、抜本的に解決するための知恵と配慮が、日本側に求められている。また、報道によれば、日本政府は報復のために韓国の国連安全保障理事会入りに反対することを検討中であるとされている。しかし、日本がそのよう嫌がらせ行為をしても、韓国はいずれにしても安全保障理事会の理事国に選ばれるであろうから、日本は国連において自分で自分の首を絞めるだけである。潘基文国連事務総長(元韓国外相)は、最近日本の高須幸男元国連大使を国連事務局の枢要のポストに抜擢してくれた。その恩義を日本は忘れてじゃならない。
これまでの日韓間のやりとりをみると、双方とも小児病的な言動が目立つが、この際日本側にこそ大人らしい対応が求められていると考える。日韓間には、感情に駆られた強硬論者だけではなく、日韓関係の悪化を懸念する良識ある人々がいるはずである。このような人々が表面に出て、世論を好ましい方向に誘導して欲しい。さもなければ、日韓関係には将来も楽しみもない。
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