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2012-08-24 00:00
竹島問題における日本敗訴の可能性とその意味
吉田 重信
日中関係研究所主宰・元大使
尖閣領土問題と竹島領土問題とは、同列に論じられることが多いが、実は両者には本質的な違いがある。つまり、前者は日本が実効支配しているが、後者は韓国が実効支配している、という非相似形的違いである。現在の国際法は、実効支配、つまり既成事実を重視する趨勢にあるが、これは、武力による紛争解決を禁じている国連憲章などの考え方に淵源があり、戦争防止のための知恵でもある。したがって、尖閣を実効支配する日本は、中国に対して圧倒的に有利な立場にあり、他方、竹島を実効支配する韓国は、日本に対して圧倒的に有利な立場にある。
このことは、日本と韓国が一致して竹島領有問題を国際司法裁判所に共同提訴した場合には(今のところその可能性は少ないが)、国際司法裁判所は、韓国による長年にわたる竹島実効支配という事実を主たる根拠にして、韓国側の竹島領有権を認める判決を出す公算が大きいことを意味している。
とりわけ、国際司法裁判所の判事の中には、中国やロシアの判事をはじめとして、韓国側の肩をもつ判事が少なからず輩出する可能性がある。また、「判決」それ自体ではなくても、「少数意見」としてであっても、韓国側に有利な意見が付記されたときの、日本にとっての不利な状況は、予測し難いものがある。
したがって、韓国政府は、これまでの国際司法裁判所への提訴拒否の態度を改めて、提訴に応じる方が訴訟戦術として有利であると気づく可能性がある。他方、日本政府内部には、竹島領有権問題を国際司法裁判所の判断に委ねた結果、たとえ裁判所が韓国側の竹島領有権を認める判示を行っても、それによって日本国内の愛国主義的政治家や一般世論も納得すればそれでよいと、わざと「負け戦さ」することを思いついた人がいるのかもしれない。その意味では、日本が国際司法裁判所で「負ける」ことによって「日韓間の紛争が平和的に解決される」という戦後の国際政治での好ましい前例となるかもしれない。
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