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2012-08-26 00:00
軍事力の後ろ盾なき領土交渉には限界がある
松井 啓
元駐カザフスタン大使
今までおろそかにされてきた領土問題について、韓国大統領の竹島訪問を契機として日本国民の関心が急速に高まったのは、遅きに失したとはいえ、結構なことであると思っています。領土問題の解決が進展しないことについて、外務省を始めとする官僚の責任を問う声が喧しいですが、官僚は、政策を立案し、提示することはできても、最終的にどのような政策を採用するかは、政府の決定することです。「何も決められない」、「解決先送りだ」、「弱腰だ」などの非難は、官僚に向けられるべきものではなく、責められるべきなのは、政策決定をする政府・与党であり、あえて言えばそのような政権を選んだ国民です。
領土問題に関して言えば、国民の一人ひとりに、血を流してでも、自国の領土を守る(取り返す)強い意志と覚悟があるのかが、問題です。国民の強い後ろ盾があり、十分な軍事力(少なくとも相手の不当・不正を許さない抑止力)を備えているのかが、重要なポイントです。「武力で取られたものは、武力でしか取り返せない」という国際政治の時代は終わったという見方もありますが、そして領土問題は種々様々な関係全体の一部ですから、経済、貿易、資源、科学技術など他の分野とからませて交渉することもできますが、軍事的抑止力なくして、「外交をせよ」、「話し合いで解決せよ」と言われても、それだけでは真っ向から勝負を挑むことができないのは、否定できない事実です。
日本が抱える3つの領土問題について、その解決の方針を整理すれば、私見では次の通りとなります。第一に、竹島問題は、日本の立場を明確に維持しつつ、韓国のナショナリズムが沈静化し、次期韓国政権が落ち着くまで待つ。第二に、尖閣問題は、早急にこの海域監視のための恒久的施設を建設し、「国境警備隊」を尖閣諸島に常駐させる。また、漁船の避難港と管理事務所を設置し、不法侵入の再発を防止する。第三に、北方領土問題は、極東開発のため東方シフトしてきているロシアの目論見を探ることは重要ではあるが、4島返還以外の形での決着を様々な日本人が色々な思惑で次々に提案する現状は、対ロ交渉における日本の立場を弱体化させるだけで、望ましくない。最終的にどのような形で決着を付けるのかについての国民的合意が固まるまでは、拙速で交渉を進めるべきではない。その際には、中国の海軍力の拡充、北方領土の軍事的重要性、北極海の解凍による新航路利用の将来性、周辺海域における漁業・海底資源開発の可能性等も十分に見極める必要がある。
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