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2012-08-28 00:00
「尖閣問題は時間との勝負」論は、実に新鮮な意見だと思う
山田 禎介
国際問題ジャーナリスト
8月25、27日付けの北原二郎氏の現場中国からの投稿「(連載)尖閣問題は時間との勝負、国際司法裁判所の活用も(1)(2)」読んで、実に新鮮な見方だと思ったので、意見、感想を述べさせていただきたい。とりわけ連載(2)での北原氏の言う「悲しいかな『尖閣は中国領』と信じて疑わない13億人の民意が生み出されてしまっている。さらに一部国内向けには、『琉球(沖縄)も中国領』との主張さえも散見されるようになっている」とのくだりには、思わず眼がとまる。かつて筆者は、本欄に「麻生首相(当時)のサハリン訪問を懸念する」との一文を寄稿し、自民党森政権時代の沖縄サミット(2000年)への中国首脳招請問題を指摘し、中国がこれを黙殺したのは、かつて琉球と呼ばれた地域に対する、中国の歴史的、文化的を“潜在宗主権”を依然意識しているからであり、中国首脳の沖縄訪問はありえない、と記した。
またある会合で、アメリカ人の実に温厚な文化人類学者と沖縄を話したときのこと。当然「沖縄は日本の一部」と語る筆者に、この温厚な紳士は「リューキューは日本ではない」と譲らなかった。もとより、筆者がこれに同意するわけはなく、その話は中断した。だが、かつて私的略奪船(海賊)が海軍に編入されたアングロ・サクソンの、その海賊が琉球を知り、またペリー艦隊は、日本に向う途中、琉球に寄港した事実があることに注目する。Ryukyu は早くから英語化しており、日本返還前の米統治下では、沖縄ではなく、かたくなに「琉球」の名称が各所で使われたこともある。
筆者が言いたいのは、海外にはこのような見方も厳として存在することだ。それを認識したうえで、日本の主張を固め、発信したいものだと思う。尖閣諸島に関しては、1978年の鄧小平中国副首相来日の際、当時最高指導者だった同氏が、日本側質問に回答するかたちで、中国の尖閣への領土的「権利の留保」を半ば公式に表明した。このことが現在の中国の「核心的利益」醸成につながっている。
なお、北原氏の言う「10年、20年先、西太平洋における米国と中国の軍事バランスは、残念ながら現段階とは様相を異にしているであろう。米国の軍事力の優位が揺るがぬ内に、国際司法裁判所をも利用することで、問題を国際化する必要がある」には、別の見解を持つ。中国海軍の海洋展開への疑問は、拙稿の「中国の海洋戦略は政治的思惑先行?」に譲る。さらに北原氏の見方とは異なるのは、筆者は「国際司法裁判所を過大評価するべきではない」との意見に傾くからだ。国際司法裁判所のこれまでの「勧告的意見」、オランダ・ハーグので取材現場で垣間見たが、あの中世宗教裁判所的雰囲気の建物と内部とあいまって、現実国際政治の場とのかい離があまりに激しい。とはいえ、北原論には現場ならではの傾聴すべき内容が実に多い。本欄は、反対論で決め付けるものではなく、あくまでも「自由な意見交換の場を通じて、相互啓発とより高い次元への議論の発展」を図るべき場であると信じるからだ。
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