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2006-10-30 00:00
北朝鮮核実験に続くものは「世界の分極化」?
角田勝彦
団体役員
船舶検査を含む経済制裁を定めた北朝鮮制裁決議1718が10月9日核実験実施発表からわずか6日の14日に国連安保理により全会一致で採択されてから、日本(輸入禁止、船舶入港禁止、入国禁止の独自の制裁措置)、米(北朝鮮不拡散法含む)を始めとして世界的に厳しい制裁が実施されてきている。19日の中国唐家璇国務委員と金成日総書記との会談など2回目の実験阻止を目的とする各種の働きかけも行われている。
吉田康彦氏が、ブッシュ大統領に金正日総書記との直接対話を呼びかけた(投稿NO.149)ように、米国は北朝鮮が希望する2国間対話に応ずべきとの声もあるが、長南政義氏のように「『支援を与え、譲歩を得る』形式の解決は、『「問題の先延ばし』以外の何物でもない」とする認識(投稿No.150)も増えている。韓国でも太陽政策が揺らいでいる。たとえば米国が主導する大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)への参加可否で国内が分裂している。閣僚辞任も相次いでいる。
現実的に見て、たとえば6か国協議の枠内で2国間対話が実現するにしても、米(最近も北朝鮮の偽ドル札スーパーノート非難)が北朝鮮の金融制裁解除などの一方的主張を受け入れるとは予想できない。安保理決議1718は、国連加盟国に採択後30日以内に対北制裁で各国が何を実施したかの安保理への報告を義務付けているが、金正日総書記が総額40億ドルを保有していると報道されるスイスも北朝鮮の金融資産凍結に踏み切った。中国の主要銀行も北朝鮮に対する金融制裁の包囲網を狭めている。明らかに北朝鮮への圧力は高まっている。
せっかく中国・ロシアも受け入れた安保理決議が出来たのである。しばらくは、この決議の履行を確保し実効性を高めて、北朝鮮の反応を見るのが上策である。たしかに2回目の核実験阻止ひとつ見ても解決のめどは立っていないが、これまでも北朝鮮の無法ぶり(我が国との関係では拉致、覚醒剤密輸もある)は有名だった。他方、ミサイルに搭載可能な小型核兵器が開発されるまで、物理的(テロを含む)危険性には大差ない。
さて朝鮮半島の未来について、さまざまなシナリオが描かれている(たとえば10月25日付『Newsweek』誌による武力行使、核ボタン、体制維持、経済改革、内部崩壊)が、問題はもっと大きい。国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は10月16日、核技術拡散防止に向けた一段の措置が講じられなければ、約30もの国が短期間で核兵器製造能力を開発する恐れがあると警告した。イランは2基目のウラン濃縮装置を10月から稼働させた(イランは原子力発電の燃料製造が目的としているが、これにより核爆弾1個分の高濃縮ウラン生産に必要な期間は従来予測の半分の5年余に縮まるとされる)。北朝鮮核実験非難を含む我が国などの核軍縮決議案は27日圧倒的多数の賛成により国連総会第一委員会で採択された(反対は米国、インド、北朝鮮の3か国)が、世界は逆方向に動いている。
警告されているのは、まさに私が19月16日の寄稿「近未来を考える(ニュールネサンスからメタモダンへ)」で指摘した「3.乱世」への道である。ミサイル防衛(MD)が技術的に困難な現状からして、M・カプランが説く国際システムの6つの理念型のうち「完全分極化」(すべての国が拒否権を持ち独自に行動できる)の未来である。たとえば、このまま事態が推移して、北朝鮮が核兵器の小型化(さらに米本土にも到達可能な未来型テポドン・ミサイルの開発)を実現するケースである。この可能性に非核国日本がどう対処すべきかは、「1.多強(とくに米中)対立」の未来の可能性の場合と同様、真剣に検討する価値があろう。その場合核武装論を検討の対象から排除することは学問的態度ではない。いずれにせよ北朝鮮への対処は、世界の進路に影響する重要な先例になる。
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