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2012-09-10 00:00
北方領土交渉準備、ハジメ!
松井 啓
元駐カザフスタン大使
ロシアのプーチン大統領はピーター大帝を大変尊敬しているという。大帝は西側の文物を積極的に取り入れ、ロシアを大国に仕上げ、サンクトペテルブルグをヨーロッパへの玄関として建設した(首都をモスクワから遷都)。ロシアの領土は日本の45倍であるが、その3分の2はユーラシア大陸のアジア部分で、特にシベリア以東は開発が遅れ、人口は減少傾向にある。ロシアは中国と長い国境を有するが、隣国として真に蜜月関係にあったことはなく、今後もないであろう。ロシアの最も恐れるのは、中国の人口圧力であり、特に極東ロシアへの中国人の侵入は潜在的な脅威である。
プーチンはヴラヂヴォストーク(ロシア語で「東方征服」の意)をアジアへの玄関としたく、莫大なインフラ整備のための資金をつぎ込み、今次APECを開催したのもその布石となるとみたからである。極東開発の観点からは、プーチンにとって日本は最もおいしい国であり、最も当てにできる国である。日経電子版によれば、大統領は9月9日の記者会見で「日本は最重要パートナーの一つ」であり、「日本経済の潜在力も、問題も、理解しており、関係の発展に関心がある」と述べ、マツダ、トヨタに言及し、日本企業の進出を歓迎した。また、日本との石油やガスの資源エネルギー分野での協力の一層の発展にも望みを託し、漁業分野の両国間協力にも期待を示した。
プーチンは、更に日本との関係について「過去から持ち越された全ての問題を解決したい」と述べた由であるが、これによってロシアが北方領土問題の解決に積極的になったと糠喜びしてはならない。産経新聞によれば、ロシアは北方領土の島々及び周辺の小島や岩礁にロシア名をつけているとのことで、これはロシアが交渉のための足場固めを着々と進めていることを示すもので、ロシアの本気度の表れとみて良いであろう。ロシアの交渉は、最初に交渉の壁を極めて高く、厚くして、強面に出してくることを、十分覚悟しておく必要があろう。しかし、プーチンが上記のように日本を極東開発に最も利用しがいのあるある国とみている今が、領土問題解決の目途をつける最適な時期である。日本側としては、開発協力ばかりを食い逃げをされないように、十分に準備をし、日本側の合意を作っておくべきであろう。
準備の段階で確認や整理しておく課題には次のようなものがあろう(順不同)。
1.4島及び周辺小島、岩礁は日本で明確に記録されているか。
2.これら島々の地政学的価値(海洋戦略面からみた日・露・中・米の関係、海洋漁業・海底資源・エネルギー的価値、北極海航路開発からみた重要性等)。
3.領土返還の形態(4島一括、同時返還か。最初に2島、追って2島、最終的には4島返還か。面積による折半か)。
4.現存しているロシア軍事基地の取り扱い(沖縄方式もありか)。
5.在住しているロシア人の取り扱い。かつて居住していた日本人の取り扱い。
6.国際司法裁判所への提訴。
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