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2012-09-11 00:00
「石原首相」は危うい、まだ10年早い
杉浦 正章
政治評論家
政権交代につながるのだから、軽いよりも重い方がいい。体重もそうだが、人品骨柄から言っても、「石・石戦争」は幹事長・石原伸晃よりも前政調会長・石破茂の方が重量感があっていい。泥棒面(づら)と言ってもいいほど人相の悪い長老たちが、自民党伝統の派閥支配を復活させようと虎視眈々と狙っているから、これに抵抗する石破の方がいい。石原は修行が足りない。まだ10年ぞうきん掛けをやった方がいい。まず外相など主要閣僚を1度はこなすべきだ。ただ一つ石破の欠点は、目つきの悪さだ。筆者の女性友達も、「目つきが悪いから嫌い」なのだそうだ。新聞と同じ事を書いても面白くないから、米国のブロガーが大統領選で旗幟を鮮明にさせるように、支持を鮮明にすることにする。石原には恩も恨みもないが、筆者の嫌いな民放テレビ出身であることが、まずひっかかる。どうしてもテレビジャーナリズムの「羽毛のごとき軽さ」が目立つのだ。幹事長という重要ポストに就きながら、発言に思慮がなく、深みもない。人の気を引いてなんぼのテレビ特有の軽さを身につけているのだ。
9.11テロを「歴史の必然」、放射線測定を「市民に線量を計らせないようにしないといけない」。反原発を「集団ヒステリー」といった失言を繰り返している。ついには胃ろう患者を「意識が全くない人に管を入れて生かしている。まるでエイリアンだ」と述べた。この種の発言癖を持った政治家が責任あるポジションに就くと、かならずどこかで重大な失言を繰り返す。首相でこの発言をしたら、不信任案が直ちに成立する。今度の自民党総裁ばかりは、政権復帰後最初の首相になり得るのであり、失敗は許されない。石原は限りなく危険だ。選挙目当てのポピュリズムで総裁を選んではならない。次に政治姿勢の問題がある。「谷垣さんがやるのなら、わたしは出ない」と不出馬を宣言しておきながら、「形勢我に利あり」とみれば、手のひらを返したように「谷垣総裁を支えるために政治をやってきたわけではない」と裏切る。政治の根本は信頼関係だ。老獪(かい)な長老ならばいざ知らず、まだ若い政治家が、平成の明智光秀を演じてはいけない。支離滅裂な問責決議支持で谷垣が長老のやり玉に挙がったが、本来ならば、国会対策の最高の責任者は幹事長である。谷垣の防波堤になって、むしろ辞任するほどの対応があっても然るべきであった。
そもそも長老とはといえば、首相でありながら番記者ごときと喧嘩するといった低レベルの醜態を繰り返した森喜朗や、顔を見れば「陰謀」を感じそうな古賀誠である。これに取り入ろうとする根性がなっていない。どうして「爺殺し」を身につけたかというと、石原慎太郎という厳しい父親を持ったからに違いない。長男は、どうしても父親に取り入ろうとする。その技術を党長老にも適用し、長老はそろって石原を「ういやつ」ということになっているのだ。これに比較して、石破はどうだ。冒頭述べたように目つきが悪い。テレビに出て考え込むようなときに、時々黒目が上方にかたよって、左右と下部の3方に白目のある3白眼となる。犯罪生物学の創始者で精神科医であるチェーザレ・ロンブローゾは犯罪者に多く見られる身体的特徴としているが、いくら何でもそれはない。むしろ飛鳥の古仏に同様の目つきがある。同じようなすごい目つきの柔道の松本薫は金メダルを取った。笑うと可愛いが、石破も笑うと可愛い。国会での質問を聞くと、やや理屈に流れるところがある。持ち出さなくてもよい法律論で相手を煙に巻こうとする習癖がある。この「利口さ」を前面に出しすぎなければ、支持は広がる。見識も政治判断も石原を大きく凌駕している。石破は長老に嫌われていることを十分意識しており、「総裁を派閥の力学で決めることは、自民党にとってプラスではない」とけん制に出ている。「石・石決戦」は長老支配か、世代交代か、の側面が出ている。
国会議員200票と地方票300票で争うことになるが、地方の人気は石破に利がある。党員票と言っても、一般に対する世論調査とよく似た傾向を示すときが多い。朝日の世論調査によると、石破茂が23%でトップ、2位は石原伸晃氏の19%。安倍晋三が13%、町村信孝氏が4%林芳正氏が2%の順だ。安倍と石原は拮抗するかも知れないが、恐らくこんな感じで出てくるのではないかと思われる。5人の乱立で、1回で過半数に到らない可能性が強いが、国会議員だけの決選投票になった場合は、かねてから述べているように「石・石激突」となる公算が大きい。その場合安倍は、石破との連携が出来ており、大勢は石破になだれ込む。林はもともと石破を「兄貴分」と慕っている。これに加えて、谷垣を支持していた議員らの「怨念票」が石破に回る。町村がどう動くかと言えば、勝ち馬に乗るかも知れない。石原は長老が頼りであり、地方票も石破に迫るものがある。衆参合わせて28人の額賀派が石原支持でまとまりつつあるのもプラス材料だ。いずれにせよ伯仲の決戦となるだろう。新聞報道は、読売の荒さが目立つ。民主党代表選では7日付朝刊で「細野豪志立候補」を決め打ちして、「細野不出馬」の朝日に大敗北。それでもめげずに自民党代表選は石原一辺倒だ。谷垣出馬断念まで、石原に有利とこじつけている。石原の「爺殺し」は新聞にまで及んでいるかと思いたくなる。
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