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2012-09-19 00:00
尖閣周辺で展開されている2つの砲艦外交
山田 禎介
国際問題ジャーナリスト
「大量の中国漁船群が尖閣に向かっている」とのニュースは、視覚効果が高く、メディア、とりわけテレビで多用されているが、それは結果として国民へのアオリとなり、不安を抱かせるばかりである。筆者は「事象を同時進行的に論じる」のは、冒険、危険であり、それを控える立場を取る者であるのだが、今回はあえて現状を述べてみたいと思う。いまや「米中両国による2つの砲艦外交が展開されている」のではないだろうか。本来どの国にあっても、1千隻の”漁船団の展開ぶり”を高らかに公言するのは「外交的ブラフ」であり、砲艦外交の一種である。一方、米国防長官の中国訪問と並んだ、ある米砲艦外交も、この日本周辺海域で展開されているはずだ。
パネッタ国防長官は、日本に次いで9月17日から4日間の中国訪問に入った。先立つ日本では「尖閣諸島は安保条約の適用範囲内」と述べた同長官だが、早速、米中国防相会議で強い懸念が示されたことは、中国側が、いかに日米安保適用に敏感かを示すものに他ならない。すでにクリントン国務長官も「安保の適用範囲」との発言を行っている。これら高官はいずれも日中双方の冷静な対応を求める一方で、米国が尖閣諸島の所属について明言しないのは、たとえ相手が同盟国であろうとも、一国の外交政策としてはまさに序の口の基本。でも、この地域を「the cockpit of the global economy」とするキャンベル国務次官補の発言から、米国のスタンスは十分読み取れる。
パネッタ国防長官は19日に次期中国指導者とされる習近平副主席と会談、にこやかに意見交換した模様。でも忘れてならないのは、米国お家芸の伝統的な砲艦外交だ。それも「こん棒を振り回したセオドア・ルーズベルトの時代」からは、はるかにスマートになっている。その米第7艦隊の現時点での展開ぶりは、もちろん秘密だが、公開情報では、司令官(中将)の乗る旗艦は、8月半ばには九州海域にいたし、同じころ最新鋭の強襲揚陸艦が佐世保基地を離れた。海上自衛隊は当然、この米艦隊展開にリンクしている。パネッタ国防長官は、就任後初の中国訪問となったが、訪問が突然決定したわけではなく、十分に準備されている。米軍のトップ文官パネッタ長官への訪問国周辺”海上警備”は、米海軍にとって伝統の砲艦外交での儀式であり義務。またそれを中国側は十分に承知しているはずだ。第7艦隊の原子力空母ジョージ・ワシントンを最近、横須賀で見たという筆者の友人もいるが、原子力空母が突然出港する例も多い。
ところで南シナ海の南沙、西沙諸島は、現状では中国の支配下または一部支配下にあるが、その大部分は依然紛争地域である。これら諸島と尖閣諸島を対比し、懸念する向きは多いが、東シナ海の尖閣諸島の戦略的重要度は、キャンベル国務次官補の「the cockpit発言」で象徴されるように、格段の重みがあり、南沙、西沙の比ではない。さらに尖閣海域は、第7艦隊の足元でもある。日本政府の尖閣国有化については、中国にとって81年前の柳条湖事件記念日の直前に行われた愚挙であるとの批判もされるが、パネッタ国防長官のアジア歴訪(日、中、ニュージーランド)と並ぶのが、別の意味で気になる。なお筆者は、米海軍横須賀基地を数年にわたり現地で取材し、またグアム島とフィリピンの海空米軍基地群への取材経験がある者だが、決して軍事マニアではないことを付記しておく。
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