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2012-09-29 00:00
尖閣問題で最優先は不慮の衝突の回避である
角田 勝彦
団体役員
尖閣問題は、中国の内政(小規模の権力闘争の可能性?)とからんでいるようで、次期中国共産党大会(10月末といわれていたが、11月8日からになった)での新指導部発足で今の騒ぎが急速に収まる望みはあるが、中国漁船や公船の我が国領海侵犯を契機に、不慮の衝突が起こる可能性もある。マッチ一本火事の元である。類焼の危険もある。これを防ぐためには両国政府間でホットラインなどの策定を図るとともに、抑止力として海上保安庁の強化に最優先で取り組むことが必要である。中国人のけんかは、見ていて恐ろしいほど言い合うが、相手のつばが顔にかかるほど近寄っても、双方両手は背で組んでいる、と聞いたことがある。日中国交正常化40周年記念式典の中止などは言い合いの範疇に入るとしても、9月15日の北京ほか50都市以上での大規模反日デモ(一部暴徒化・掠奪)は手を上げたと見なされるだろう。世界に流れた映像は。中国に裨益しなかった。デモは国民の自発的行動であるとの弁明は通らない。共産党独裁の下、中国の行動は官民一体である。今後の行動も指導部次第であろう。
9月9日にウラジオストックで胡錦濤・中国国家主席が野田首相に「不法で無効」と尖閣諸島国有化撤回を求めた2日後の11日、日本が国有化に踏み切ったことが同主席のメンツをつぶし、大規模デモにつながったといわれている。そのほか一連の攻勢激化は周知の通りである。尖閣問題は、中国の攻勢に外交(二国間・多国間)、経済、世論などあらゆる方面で対処する必要があるが、もっとも重要なのは、日中間で力の衝突を起こさないことであろう。経済的措置(レアーメタルの例)やサイバーアタック等も問題になるが、中心は武力である。国連憲章は、国際紛争を平和的手段によって解決するよう、「武力による威嚇又は武力の行使」を控えるよう求めている。米国は尖閣諸島を日米安保条約の対象範囲と明言している。現時点で、中国が武力攻撃で尖閣問題を解決しようとすることは無いと見てよい。
問題は武力以外の力を用いて中国が日本の実効支配を覆そうとする可能性である。連携プレーではあるまいが、9月25日台湾漁船団が当局の巡視船とともに尖閣諸島付近の我が領海を侵犯し、我が国巡視船の放水などで退去した。台湾巡視船は放水で反撃した。27日、台湾の馬英九総統は、この漁民らと、台北の総統府で面会し、「釣魚台に対する(台湾の)主権を全世界に平和的にアピールした」と述べ、漁民らをたたえた。この頃、実現はしなかったが、千隻の中国漁船団が尖閣へ向かうとの報道もあった。中国は漁船(補助金等で動員)、民兵(漁民に偽装)、漁業監視船(農業省漁業局所属。海軍艦艇を改造した事実上の軍艦)、海洋調査船(国家海洋局。「海軍予備部隊」と位置づけられる)及び海軍が、統一意志の下に動ける国である。領海侵犯のみならず、尖閣諸島上陸の可能性(8月香港の活動家が上陸)もある。これを阻止するのは容易ではない。さらに入り乱れての台湾漁船等排除の映像を見ても、船同士の不慮の衝突・沈没などの事件の可能性も想定される。
野田首相は7月26日の衆院本会議で「尖閣を含む領土・領海で不法行為が発生した場合は、自衛隊を用いることも含め毅然と対応する」と述べ、尖閣への自衛隊出動を検討する考えを表明した。これを受け、岩崎統幕長は同月末、対処方針策定を部内で指示したと報じられるが、軍事力(手加減が困難)による排除を旨とする自衛隊の性格からして自衛艦の出動は最後の手段だろう。マスコミを含め国民に作戦行動の手の内をすべて明かす必要はないが、海上保安庁の装備面を含む強化と早急な作戦策定が望まれる。
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