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2012-10-09 00:00
日本マンガの輸出を意識して戦略的に使おう
船田 元
元経済企画庁長官
沖縄県・尖閣諸島の国有化に端を発した中国各地での反日運動は、一部暴徒化するなど激しさを示していたが、ここにきて中国政府が圧力をかけはじめたため、ようやく沈静化してきた。満州事変のきっかけとなった柳条湖事件の記念日直前に、不用意に国有化を発表した民主党政府の稚拙な外交に振り回され、実害を受けた日本からの進出企業は、もっと批判の声を出してもいいのではないか。しかし一方では、日本にとって中国は永遠に「隣の国」である。たとえ「お付き合いしたくない」と思っても、引越しすることは出来ない。日本の主権はきちんと主張しながらも、隣国とどう付き合っていくかに智慧を絞らなければならない。チャンネルを複数持っていて、いつもどこかのチャンネルはつながっていることが肝要ではないだろうか。
ところで、国と国の外交には、文化という材料を使うことがある。とてもうまい使い手はご承知のように韓国である。日本でも「韓流ブーム」を巻き起こした「冬ソナ」をはじめとする幾多のドラマの輸出は、日本はもとよりアジア各国の国民の間に、確実に韓国贔屓を誕生させた。この結果日本から韓国への観光客は、以前より倍増した。しかも自然に海外流出したというのではなく、意識して輸出戦略を練っていると思われる。
翻って、日本はどうだろうか。日本人のシンプルな美に対する感覚が、「クールジャパン」という表現で各国にもてはやされている。しかし、これはまだ、文化戦略としては訴求力が弱い。皆が飛びつくような日本の文化として有名なのは「マンガ」や「アニメ」である。20年も、30年も前に、日本で放映されたテレビアニメが、東南アジアや中東で人気を博していることは、旧聞に属している。イラク戦争後の復興に派遣された自衛隊が、装甲車のフェンダーに「キャプテン翼」のマンガを貼り付けていたのは、有名な話だ。
しかし、日本の外交においては、「マンガ」を意識して戦略的に使おうという発想に乏しい。唯一発想しようとしたのが麻生内閣で構想された「アニメの殿堂」である。そこでは「マンガ・アニメ」の研究を進展させたり、海外への発信基地としたりすることが目論まれていた。ところが、当時の野党・民主党などから、「巨大なマンガ喫茶はいらない」などと曲解されて、つぶされてしまったのは、極めて残念である。折角多くの国の国民に認知されている「マンガ」や「アニメ」である。このたびの中国との関係を少しでも改善するには、これらの「武器」を使った文化戦略を、真剣に考える必要があるのではないだろうか。
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