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2012-10-14 00:00
(連載)この際日本はその対中戦略を再構築せよ(1)
北原 二郎
会社員
8月の香港の活動家の尖閣への上陸と強制送還、その後の日本による国有化、さらには9月18日前後に吹き荒れた反日デモを経て、日中関係は緊張の度合いを高めている。尖閣諸島近海への中国公船の「巡邏」に名を借りた侵入は常態化しており、また経済面でも日本車の販売台数の激減など様々な影響が出てきた。中国に暮らす私の周りでも、日本からの輸入商品の通関に時間がかかり、納期に支障が出るといった影響が見られる。こうした事態については、政府もWTOへの提訴も辞さないという毅然とした態度で臨むべきである。とはいえ、11月に習近平体制の発足が予定されている事もあり、尖閣問題での中国の軟化は期待できず、巷間では所謂チャイナリスクを巡って企業戦略の見直しが迫られ、尖閣諸島の現場では、海上保安庁職員が中国公船への対応において尋常ならざる神経戦のただ中にある。
日本の安全保障問題として尖閣諸島を見るなら、「日米安保の適応範囲である」との言質がアメリカから得られたといっても、その庇護の元にあると過信することがあってはならない。何故なら、アメリカは再三「主権については日中どちらの側の立場に立つものでもない」とも述べており、これは先のバネッタ国防長官の発言でも明白である。すなわち10月1日に鍋島氏が本欄でご指摘されている通り、日米安保は“実効支配”が適応の前提条件となっているのであり、日本はその対中戦略を基本的に再構築する必要があるのではないか。
尖閣諸島については、1979年に日本が簡易ヘリポートの建設を計画したが、中国側の圧力を受けて撤回されたことがあった。それ以降、陸上にはレーダーやヘリポートといった防衛施設はもちろん、石原東京都知事が要求した船だまりも無く、韓国が実効支配する竹島とは比べようもないほど脆弱で、実効支配の体をなしていないのである。そのため、中国の公船の領海ないし接続海域への侵入が常態化してくる中、「中国による実効支配」へと、なし崩し的にシフトする恐れがある。敢て戦時中の用語を使えば「制海権」が奪われる状態に移行しつつあるということになろうか。以下に述べる「言論戦」、「国際司法裁判所の活用」、「日米安保体制の強化」の進捗状況にもよるが、自衛隊の駐留・米軍との共同管理のレーダー設置・船だまりの建設を進める必要がある。また、中国と台湾の連携にくさびを打ちこむべく、台湾との漁業協定を速やかにまとめること、先の船だまりについては、漁協協定に基づき操業する台湾漁船には緊急時の使用を許可すること等が考えられよう。
尖閣問題について、先日の国連総会において野田総理が「国際法に則って問題解決を図るべき」と日本の立場を主張したのは評価に値する。ただ、これは、それに続く国際世論を味方に付けるための言論戦が継続して行われて、初めて意味を持つ。「1895年の日清戦争の最中に奪い取った」との中国外相による国連総会での演説は品位を欠くものであったが、『New York Times』紙等へ領有権主張の意見広告掲載等、欧米メディアに自らの主張を浸透させる努力には、目を見張るものがあった。鍋島敬三氏が再々主張されている「Public Diplomacy(広報外交)」、いわば言論戦に、日本も国家の命運をかけて取り組む必要があろう。(つづく)
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