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2012-10-15 00:00
(連載)この際日本はその対中戦略を再構築せよ(2)
北原 二郎
会社員
ただ、外務省が「領土問題は存在しない」との立場に固執して自らの立場を訴え続けるだけなら、中国はこれに対して「日本は対話に応ぜず、中国の侵略を続けている」と国際社会に主張し続けるだろう。彼らが狙うのは「平和的な対話を切実に求める中国」と「領土問題は存在せずと、対話すら拒絶し続ける日本」という単純明快な図式である。こうした図式になった時、国際世論はどちらを支持するだろう。事実IMFのラガルド専務理事は尖閣問題について「日中間で対話を行い解決することを望む」とのコメントを発表している。日本外務省が「領土問題は存在しない」との見解に固執し一歩も踏み出さないなら、それは逆に日本の国益を損ねることになり、言論戦で勝利を得ることはできないだろう。これは国際司法裁判所の活用を検討する理由でもある。
8月25日、26日の拙稿「尖閣問題は時間との勝負 国際司法裁判所の活用も」でも述べた通り、10年先、20年先のパワーバランスの変化を考えた時、中国に対する日米の優位は誰も保障できないのであって、日本外務省の「領土問題は存在しない」との足かせのような主張に固執する限りは、中国に軍事力増強の時間的猶予を与える結果になってしまう。そのため、日米の軍事的優位が続いている今の段階で、国際司法裁判所(ICJ)をいかに活用するかを早急に検討すべきである。今回中国が尖閣周辺を含む海図を国連に提出したことから、排他的経済水域や接続水域に関する争点が明白になった。これを機に国際海洋法裁判所(ITLOS)を活用することも検討できるのではないか。要は、いかにして日中二国間の交渉から国際社会の関与する交渉へと、中国を引き込み、国際法秩序の上で解決するかである。国際法に基づく処理を主張するなら、国際法のテーブルに乗せなければ、虚妄に終わる。
現在日本外務省は「日本が有効に管理しており、国際司法裁判所への提訴は必要ない」としているが、では、逆に日本の実効支配が成り立たない状態になってからの提訴は、意味を持つのであろうか。即ち、尖閣諸島への中国軍ないし海監(国家海洋局)人員による上陸と施設の設置というような事態が発生した場合、日本政府はどう対応するつもりでいるのだろうか。日本が実効支配している現段階だからこそ、仮に中国が国際司法裁判所の活用を拒絶したとしても(日本の単独提訴になったとしても)、日本は問題解決の為に積極的な働きかけをし、提訴したとの事実を残していくことができる。そして、それは日本に有利な国際世論形成に役立つはずだ。逆に、先に述べたように、外務省が「領土問題は存在しない」との立場に固執した言論戦を続けるのは、敵に塩を送るようなもので、中国はこれを利用して、自国に有利な国際世論を形成していくと同時に、軍事力の強化を図っていくという悪循環となる。
先の国連総会における中国外相のヒステリックとも受け取れる演説からは、彼らにとって最も不利なのは国際司法裁判所や多国間交渉を日米優位の現段階において活用されることであり、逆に最も有利なのは、増大する軍事力・経済力を背景に「海上の実効支配」を今後更に強め、圧倒的優位に立った段階で日本に妥協を迫るという、正に弱肉強食のマキャベリズムに基づく二国間交渉であろう。相手は合従連衡の国、中国である。アメリカからは尖閣諸島の主権については「中立」との言質を既にとっているのである。(つづく)
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