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2012-10-15 00:00
(連載)どうする 「1票の格差」是正(2)
角田 勝彦
団体役員
さらに重要なのは「1票の格差」是正の問題である。総選挙実施のあと有権者の提訴により、「違憲」または「違憲状態」の判決が出たらどうなるであろうか。場合によっては、総選挙実施差し止めの提訴が行われる可能性もあろう。三権分立の基本原則の問題である。司法が妥協するとは限らない。国政は混乱に陥ろう。今年3月の最高裁判決は、2009年衆院選で最大2.30倍だった1票の格差を違憲状態として、都道府県にあらかじめ1議席を割り振る1人別枠方式を廃止するよう国会に求めた。小選挙区の定数300のうち47をあらかじめ全都道府県に1ずつ割り振る1人別枠方式は人口の少ない地方に配慮するために採用されたが、3月の最高裁判決では導入時の激変緩和措置の役割を終えたとして、「できるだけ速やかに廃止」とした。なお参院に関しては1票の格差に対する最高裁判決はまだ出ていないものの、最大5倍だった10年参院選に対して東京、高松、福岡の3高裁が「違憲」と断じている。
衆院選挙制度改革は、菅直人前首相の退陣時期に関心が集中したため、8月末に閉会した通常国会では見送られた。各党は、これまでにいろいろ選挙制度改革案を示しているが、与野党協議に向けた動きは鈍い。各党内での意見の対立もある。民主党でも「人口だけで考えるべきでない」「地方の声が反映されなくなる」などと反対する意見が続出したという。たしかに1人1票は民主主義の根幹であるが、急激な改革には問題はあろう。
難航必至の1人別枠方式問題に加え、小選挙区の定数300の残り253(人口比例で配分する仕組み)の区割りの問題もある。これは政府の衆院議員選挙区画定審議会が同設置法に基づき、10年ごとの国勢調査を踏まえて改定する。同審議会は昨年10月の国勢調査結果を踏まえた改定案を首相に勧告する予定だったが、3月の最高裁判決を受けて作業は中断している。同審議会の改定案勧告には通常1年かかっている。任期満了選挙になるとしても時間切れが迫っている。
総務省が今年2月に公表した10年国勢調査の速報値では、人口が最少だった高知3区を1とした場合、2倍超は97選挙区にのぼる。1人別枠方式廃止はともかく、最低限の是正は総選挙前に行う必要があろう。政治は司法に優先しない。最低限の格差是正でやむをえないだろう。2007年参院選の前年に「4増4減」の定数是正が行われ、1票の格差が04年参院選の最大5.13倍から4.86倍に縮小したあとの参院選で、選挙無効(やり直し)を求めた訴訟に最高裁が「合憲」と判断した例もある。緊急避難的改革と考えられよう。3党首会談では、最重要課題として、とりあえずの「1票の格差」是正に取り組むべきだろう。(おわり)
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