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2012-10-15 00:00
日本は、ASEANの結束強化に努めよ
鍋嶋 敬三
評論家
11月の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に向けて日本は南シナ海の領海紛争で乱れたASEANの結束を強めるため精力的に努力すべきである。7月の閣僚会議では拘束力のある行動規範作りをめぐって、反対する中国の圧力を受けて主催国のカンボジアが紛争当事国のフィリピンなどと鋭く対立、会議として初めて共同声明を出せずに終わった。結束の乱れはアジア全体の安定と発展を損なうことにつながる。結成以来の危機に立たされたASEANが求心力を回復するために日本が果たす役割は小さくない。2013年には日本・ASEAN協力40周年記念の特別首脳会議が開催されるが、日本はASEANとの協力関係を一層強めて、その結束強化に貢献できる立場にある。
ASEAN自身の努力が必要なことは言うまでもない。著名な国際政治学者であるダトゥ・ムティア博士(マレーシア戦略国際問題研究所)は南シナ海の領海紛争がアジアの平和と安全保障の役割を担う組織としてのASEANを損ないかねないとの危惧を示し「紛争を解決する不屈の努力がASEANの信頼性を回復する」と訴えている。ASEAN加盟国に対する中国の切り崩しで、ASEANの存在意義が問われるとの危機感がある。東南アジア諸国にとって中国への経済依存度が強まる一方、軍事力の拡大、海洋への進出、自国の論理を振りかざす中国の行動が不安を駆り立てている。
海洋協力の在り方を議論するASEAN海洋フォーラム(AMF)が10月5日にフィリピンで開催された際に、東アジア首脳会議(EAS)参加国の日米中韓なども加わる第1回AMF拡大会合が開かれた。この会合は2011年のEASで野田佳彦首相が提唱したものだ。外務省の鶴岡公二外務審議官が、東シナ海や南シナ海で一方的な領有権を主張する中国を念頭に、「国連海洋法条約など国際法の順守」を強調した。この点については9月の日本とマレーシア、シンガポールとの首脳会談で共通認識として合意している。日本がASEANを軸に海洋の国際秩序の維持のため積極的な役割を果たしていることは大いに評価される。
2国間関係の推進もASEANの強化につながる。日本は、ASEAN事務局が所在し、その「盟主」を自任しているインドネシアとの9月末の首脳会談で、「戦略的パートナーシップ」を確認した。フィリピン政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)との間で10月7日ミンダナオ和平に関する「枠組み合意」がマレーシアの仲介で成立した。日本は2011年8月、アキノ大統領とムラドMILF議長を東京近郊に招き、非公式会談を設定するなど、和平合意へ控えめながら重要な役割を演じてきた。合意が最終的に実行されれば、東南アジアの平和と安定に大きく資する。軍政から民主化へ漸進するミャンマーに対しても、日本によるインフラ整備がラッシュ状態で、ニューヨーク・タイムズ紙は「ミャンマーは中国と日本の戦略的争いの場と化した」という専門家の言葉を紹介した。斎藤勁内閣官房副長官が10月9日カンボジアのフン・セン首相らと会談、尖閣諸島が国際法上も歴史上も日本の領土であることを説明した。外務省によれば、フン・セン首相が歴史的経緯について「理解が深まった」との認識を示し、11月の首脳会議の「成功に向けて力を合わせる」ことを確認した。東南アジア諸国の結束がどのように回復するか、日本外交の真価が問われる秋である。
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