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2012-10-23 00:00
「年内解散論」の前原は掃きだめのツルだ
杉浦 正章
政治評論家
貧すれば鈍するというが、民主党政権の「前原批判」は、あるべき政治の原点を逸脱して、自らを腐った党利党略の泥沼に沈めるものになるだろう。国家戦略相・前原誠の発言の本旨は“うそつきドジョウ”の印象を払拭しようとしたものに他ならない。それに不快感を述べる首相・野田佳彦と官房長官・藤村修は、天に唾するものであろう。批判すればするほど、前原が民主党政権という掃きだめのツルに見えることが分からない。前原発言は、10月21日の発言が大きく報じられたが、既に筆者がいち早く19日の記事で指摘している。前原は18日の時点で「民主党政権がどうなるか分からないが、国家のために早期解散がいい。先送りしていると見られることは、決して良くない」と述べているのだ。それが21日には「年明けに解散しては『近いうち』とは言えない」となった。22日も「私の考えは、きのうの発言と変わっていない。野田首相が、民主・自民・公明の3党の党首会談で思いを話し、解散に向けた条件を示したので、あとは信頼関係をもって3党で話をすることに尽きる」と“年内解散の見方”を重ねて示した。
この前原発言に対して、永田町では様々な憶測が生じている。あまりの自公寄りの発言に「選挙後の自公政権へ秋波だ」と、政権交代後の連立に向けてポストを狙ったという見方まで出ている。まさに“邪推”とはこのことを言うのだろう。外国人献金疑惑が出るやいなや、世話になった韓国人女性をかばって、外相を直ちに辞任するほどの政治美学を持った男が、そんなことを考えるわけがないではないか。むしろ野田への援護射撃と受け取るべきことだろう。英語でうそつきの「ライアー」は最大の侮辱となるが、その“ライアー野田”が定着してしまわないように政治の常識を述べたものであろう。現に「総理は、自分の言葉に責任をもち、審議を重んずる方だ」と付け加えているではないか。
もちろん前原にも持論がある。持論とは早期解散論だ。幹事長・輿石東がかつて主張したように、衆参同日選挙をしては、衆参で自民党が圧勝することになるから、これを避けるべきだというものだ。さらに野田の支持率がまだあるうちの解散の方が“野垂れ死に解散”よりはましという判断もある。いずれも民主党を思っての発言であろう。これに対して野田は、狭量なる判断をした。日本維新の会の国会議員団代表・松野頼久との会談で、松野が「閣僚が解散について言及するのはいかがか」とおべんちゃらを言ったのに対して、「私もそう思う」と不快感を示したのだ。藤村も「解散を決めるのは首相だけだ」とこれまた不快感。自分の内閣の閣僚の発言を首相やスポークスマンが批判して不快感を示す場面だろうか。それでは一日でも長く政権の座に居座りたいという邪心が丸見えではないか。不快感を示すくらいなら、直接会って戒めるべきだが、それが出来ないのは後ろめたさがあるからだ。
いまや野田政権の存在は日本にとって最大の“公害”となりつつある。消費税増税だけは虚仮(こけ)の一念で成立させたが、以後何が起きようが手つかずだ。復興予算の流用という内閣不信任に該当する問題、法相の外国人献金、赤字国債対策などに際して、野田の存在感は全く見られない。近く辞任する法相・田中慶秋の人事は、大局を忘れた論功行賞人事で自らが招いた結果だ。任命責任に直結する。そして、しでかしたことは、中国国家主席・胡錦濤が尖閣諸島の国有化に懸念を表明した翌日に国有化を閣議決定する、という外交史上まれに見るほどタイミングを逸した誤判断だ。各国大使館は野田の断末魔の悪あがきを克明に本国に打電している。この野田にロシアのプーチンが年末の野田との会談で実りある提案をするとは思えない。アメリカは日米同盟再構築を自民党政権に託すだろう。中国も関係改善はむしろ自民党総裁・安倍晋三に期待している兆候が見られる。要するに、民主党政権は3代にわたる“駄目首相”を国民の前にさらけだしたのだ。野田は新橋や銀座の飲み会で何と言われているか知っているのか。「もう2度とだまされない」「絶対に民主党以外に投票する」が圧倒的だ。国民の信を失い、内政外交に渡って失政を繰り返した政権が、前原のまっとうな発言を批判する資格はない。薄汚い政権の座への執着は捨てて、野田は前原発言を忠臣の諫言と聞く度量を示すべきであろう。
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